「腰痛」の原因別4タイプを解説!すぐ効くツボでつらい痛みを軽減|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「腰痛」がテーマ。痛みが起こる原因や、腰をラクにするツボをご紹介します。
目次
腎の弱り・冷え・血流不足…原因別「腰痛」の4タイプを解説
姿勢の悪さや運動不足、疲労の蓄積などで、「腰痛が慢性的」という人も少なくありません。腰は文字通り「体の要(かなめ)」であり、上半身と下半身をつなぎ、負担がかかりやすい部分です。
朝から腰にだるさがある、疲労がたまってくる夕方につらくなるなど、痛みを感じるタイミングは人それぞれですが、腰周りがすっきりしないと全身がだるい・重いと感じやすくなります。その結果、動くのが億劫になり、生活のパフォーマンスが低下することも。
東洋医学では、腰痛の原因は複数あると考えられます。今回は、原因別に4つのタイプを解説。記事の後半では、痛みを軽減する腰や手のツボを紹介しますので、腰痛持ちさんはぜひ試してみてください。
(1)老化が原因で起こる「腎虚タイプ」
1つ目は、「腎虚タイプ」です。東洋医学で、腰は腎の“居場所”を意味する「腎の府」ともいわれ、五臓六腑のうち「腎」と関係が深い部位。腎は生命エネルギー、泌尿器、ホルモン、生殖器などをあらわし、加齢と共に誰でもそのエネルギーは衰えていきます。
加齢に加え、睡眠不足や休息不足、過度なストレスなどで体を酷使している人は、腎のエネルギーが消耗して、腰痛が起こりやすくなります。慢性的にずっと腰がだるい、足を含めた下半身に力が入りにくいなどの症状が腎虚タイプの特徴。
腰痛以外にも、白髪、抜け毛、むくみ、物忘れ、耳鳴り、頻尿など、老化による症状があちこちに増えてきます。睡眠・休息を大切にして、体を労わる生活をすることが大切。腎のエネルギーをなるべく消耗しないようにしましょう。
(2)寒い日に悪化する「冷えタイプ」
2つ目は、「冷えタイプ」です。薄着や過度な冷房で体が冷えたとき、寒い季節に悪化するのがこのタイプ。寒さの邪気が侵入して体が冷え、それが原因で腰痛につながります。
痛みは強くないものの、ずっと腰が重だるい感じがするのが特徴。体が冷えたあとに重い物を持つと、急激に負担がかかってぎっくり腰になる場合もあります。冷えが続いているときは特に注意が必要。
日頃から体の冷えが気になる、お風呂に入ったりカイロを貼ったりすると、一時的に腰がラクになる人はこのタイプ。腰痛を悪化させないポイントは、体を冷やさないこと。寒い時期の服装に気を付けましょう。
(3)血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」タイプ
3つ目は、「瘀血(おけつ)タイプ」です。デスクワークで同じ姿勢が長時間続くことや、運動不足、過度なストレスなどが原因で血の巡りが悪化。エネルギーの通り道とされる経絡(けいらく)がつまり、腰に痛みがあらわれます。
瘀血タイプは、血の巡りが悪い腰の一部だけに、刺すような痛みが起こるのが特徴。座りっぱなしが続いたときやストレスを強く感じたときにも痛みが強くなる傾向があります。
頭痛や肩こり、シミ・くすみなど血の巡りの悪さによって起こる不調や肌トラブルも。デスクワーク中は数時間ごとに体を動かすなどして、同じ姿勢が続かないように気を付けましょう。
(4)水分や汚れが蓄積する「痰湿(たんしつ)」タイプ
4つ目は、「痰湿(たんしつ)タイプ」です。痰湿とは、体にたまった余分な水分や汚れのことで、胃腸が弱い人や、暴飲暴食、脂っこい食事などの食生活の乱れによってたまりやすくなります。水は重いので体の下の方、つまり下半身にたまりやすくなり、それが腰痛となってあらわれます。
湿気の多い海沿いに住む人の腰痛は、痰湿タイプであることが多く、低気圧や雨の日に痛みが強くなりやすいのも特徴。そのほか、体や頭の重だるさ、むくみ、めまい、食欲低下などの症状も。
痰湿がたまらないように、胃腸の養生をしたり、脂っこい料理の食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎなどをなるべく避けて、あっさりした食事を心掛けましょう。
気温がますます下がり、本格的に冷え込む冬の時期は、冷えタイプや瘀血タイプの腰痛が悪化しやすくなることがあります。また、年末にかけて忙しくなり体を酷使しすぎると、腎のエネルギーが消耗。そのため腎虚タイプも気を付けたいところ。どのタイプも腰への負担が大きくならないように、日頃から生活習慣に気を付けていきましょう。
全タイプ共通「腰痛」対策に効果的なツボ
ぎっくり腰になって鍼灸院に駆け込む人も多いように、ツボへのアプローチは、腰痛の緩和や予防に効果的です。腰周りに集中する4つのツボと、手の甲にあるツボを紹介しますので、仕事や家事の合間に試してみてください。
命門(めいもん)・腎兪(じんゆ)・大腸兪(だいちょうゆ)・腰眼(ようがん)
命門(めいもん):背中にあり、おへそのちょうど裏側の位置。
腎兪(じんゆ):命門より指2本分外側にずれた左右。
大腸兪(だいちょうゆ):命門や腎兪よりも下にあり、骨盤の一番上の位置で、腰のベルトライン上にあるツボ。背骨から指2本分外側の左右。
腰眼(ようがん):大腸兪より指2本分外側にずれた左右。
押し方(すべて共通):腰に手を当てて、親指で体の中心に向かってそれぞれのツボを押し込みます。腰周り一帯をもんだり、さすったり、トントンたたいたりして刺激する、カイロや入浴で温めるのも効果的。
腰の痛みがないときでも、普段からストレッチをしたり、揉んだりして腰周りをほぐしておきましょう。
腰痛にすぐ効く手のツボ:腰腿点(ようたいてん)
腰の痛みや張りが強くてつらいとき、急に腰にトラブルが出たときにおすすめなのが、手の甲にある腰腿点(ようたいてん)。ツボの中でも「奇穴(きけつ)」といわれ、特定の不調に対してピンポイントで効くツボです。
腰腿点(ようたいてん):手の甲の「人差し指と中指の間」、「薬指と小指の間」をそれぞれ手首方向にたどっていき、骨同士が交わる手前にあるツボ。
押し方:「人差し指と中指の間」、「薬指と小指の間」にあるそれぞれのツボを、反対の手の人差し指と中指でグリグリと刺激。押してみてより痛い方を選び、イタ気持ちいいと感じる強さで刺激します。
今月の養生ポイント:何でも“ほどほど”が大事! やりすぎないことが養生
東洋医学で、心・肺・腎・肝・脾の五臓を疲れさせる要因をあらわした、「五労(ごろう)」という言葉があります。これは、過剰な負荷は体を疲れさせて傷つけることを意味しています。五労には次の5つがあります。
・久視(きゅうし・目の酷使)…パソコンやスマホの使いすぎ、長時間の読書などで目を使いすぎると血が不足。思考力の低下も起こります。
・久臥(きゅうが・寝たきり)…ゴロゴロ横になってばかりいると、肺が弱って呼吸力が低下。気力がわかない体になります。
・久坐(きゅうざ・座り続ける)…座りっぱなしが続くと脾(胃腸)が弱り、消化・吸収やエネルギーを全身に送る力が衰えます。
・久行(きゅうぎょう・歩き続ける)…ほどよい運動は健康に良いですが、歩きすぎは肝を傷めて筋肉を疲れさせます。
・久立(きゅうりつ・立ち続ける)…立ちっぱなしは腎を傷めて、足腰や体のあらゆる関節に負担をかけます。
このように、何でもやりすぎてしまうと、不健康になるということ。例えば仕事を「今日終わらせてしまいたい!」と意気込んでがんばりすぎてしまう人が多いですが、ほどほどのところでブレーキをかけることが大事。「やりすぎないこと」も養生の一つと覚えておきましょう。
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
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