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足の健康を守るのも皮膚科医として担うべき仕事┃ホームドクター(24)
巻き爪治療や外反母趾患者への足装具の処方など、“フットケア”にも力を入れる皮膚科医の本橋尚子先生。皮膚の病変から全身疾患を見定め、将来の健康につなげたいという本橋先生の思いは?
「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。
目次
足の寿命は50年ほど。どれだけ引き延ばせるかがカギ
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医師を目指したきっかけと皮膚科を選んだ理由は?
本橋尚子先生 父の仕事の都合で幼少期をインドネシアで過ごしました。道路は舗装されていない砂利道で、衛生状態も良いとは言えず、肌トラブルに見舞われやすかったことを覚えています。インドネシアでは日本語の本を手にすることが難しかったので、7歳で帰国してからは図書館で本を読めることがうれしくて、むさぼるように本を読みました。
入学した中高一貫校では医学部を目指す生徒が多かったこともありますが、将来はインドネシアをはじめ、医療が行き届いていない地域に渡りたいという夢もあって医学の道へ。当初は産婦人科を希望していましたが、大学6年生で結婚と妊娠をしたこともあり、皮膚が弱かった自身の経験も踏まえて皮膚科を選択しました。専門にしてみると皮膚症状や皮膚組織の生検から、全身疾患を見つけられるなど奥深く、魅了され続けて現在に至ります。
「フットケア」や「訪問診療」に力を入れていらっしゃるそうですね
本橋尚子先生 出身大学の医局に「フットケア外来」があって、担当医師から知識を学んできました。周辺の整形外科で足を専門にするクリニックがないこともあり、皮膚科では珍しい足底板※などの装具を処方するなど、専門的に診ています。足の寿命は50年ほどなので、どれだけ引き延ばせるかがカギです。巻き爪も水虫も外反母趾も、放置すれば強い痛みを生じて歩行が難しくなることがあります。きちんとケアしながら、高齢になっても歩ける足を維持してほしいですね。
※靴の中に入れて足をサポートする中敷きの一種。足やひざの痛みを緩和するために用いられる。
もう1つ注力しているのが、訪問診療です。訪問診療をする皮膚科医は少なく、千葉県内で10人程度です。開業前に勤務していたクリニックで訪問診療に携わっていたことがきっかけで、今も継続しています。家から出られない方の助けになるのはやりがいになりますし、訪問看護師やケアマネジャーなど、外来では関わらない方たちと相談しながら「チーム医療」を展開できるのは楽しいです。
足の健康維持のために日常的に実践するといいことは?
本橋尚子先生 足首を柔らかくしておくと、歩幅が広くなって歩きやすくなります。足首の柔軟性を保つには、足の指と手の指を組み足首を前後左右に伸ばしたり、ゆっくり回転させたりしてほぐすといいでしょう。足の指をしっかり動かすことも有効です。
外反母趾がない方であれば、お風呂上がりに足指でタオルをつまんで引き寄せる「タオルギャザリング」がおすすめです。足の指でグーチョキパーをするなど、普段から足指を自由に動かせるのが理想なので、5本指ソックスを履くといいですよ。
週末は着物で過ごし“非日常”を楽しむ
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お子さんの入学式をきっかけに着付けを学んだという本橋尚子先生。週末は着物で過ごすのがお決まりで、着物仲間とのお出かけも楽しみの1つ。着物のまま愛犬の散歩もするのだそう。
取材・文/江山 彩 協力/MedicalF2F
(からだにいいこと2025年2月号より)
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