
「生理周期が不規則で量も多くなりました」|教えて! 山村菜実先生
女性特有の病気や医療に関する悩みに医師が答える連載。回答者は、優しく丁寧なカウンセリングで人気の産婦人科専門医、山村菜実さんです。今回は「生理の終わり」にまつわる質問に答えます。
目次
生理が終わりに近づいている気がする

生理のサイクルが不規則になり、3カ月空いたと思っら2カ月連続で来たり…。量も多く、タンポンでも足りなくなるという51歳からのお悩みが届きました。
これは生理が終わりかけているサインなの? この時期の心や体はどんな状態? などを菜実先生に聞いてみます。
生理周期が乱れるのは更年期に入っているから
「生理が終わりに近づいているようで」とおっしゃっていますが、これは症状的にも年齢的にもおそらくその通りだと思います。「更年期に入っている」と考えてよいでしょう。
これは参考情報ですが、更年期に差し掛かるときは生理周期が短くなる人のほうが多いようです。もちろん人によって違うので相談者さんのような例もありますが、傾向として。
初めの頃は28日周期だった生理が14日くらいで来てしまうようなことが増えて、しばらくすると今度は周期が長くなり、数カ月生理が来ないことも出てきます。それでだんだん生理の回数が減っていって閉経に至る方が多い印象です。「生理が終わる」というと間隔がどんどん開いていくイメージがあるかもしれませんが、実際は初期は周期が短くなる人のほうが多いんです。

生理周期が乱れるのは女性ホルモンのしわざで、更年期に入ると女性ホルモンのバランスが大きく崩れるので、生理の間隔や量が変わってしまうんですね。 だから、質問者さんの「これって普通?」という疑問に対しては「普通のこと」という回答になるんですが…でも、これを “普通”って言っちゃっていいのかという思いはありますよね。
だって、外出先でいつ生理が来るかわからない。来れば心身に負担を感じるほどの量の出血がある。そういう状態は普通とは言い切れない気がします。
更年期に役立つ「ホルモン補充療法」と「ミレーナ」
生理の終わりごろの不規則さ、不自由さを“自然なこと”と受け入れるのも、もちろんありだと思います。でも、もし困っていたり不便さを減らしたいと感じているのなら、医療の力でできることはありますよ。
ホルモン補充療法(HRT)

まず1つはホルモン補充療法(HRT)。加齢とともに減少する女性ホルモンを補う療法で、更年期障害の最も代表的な治療法です。飲み薬、貼り薬、塗り薬から症状や体質に合わせて選びます。
閉経前や閉経直後は生理周期が乱れがちだったり不正出血を起こしやすいもの。そんなとき、自然の生理周期に近いパターンで女性ホルモンを補充することで、予測しづらい不正出血が通常の生理に近い周期と量に戻ります。更年期のさまざまな不快症状にも効果的ですよ。費用は保険適用の場合、月に数千円程度です。
ミレーナ(子宮内避妊システム)

もう1つはミレーナ(子宮内避妊システム)を装着すること。一般的に「避妊リング」と呼ばれるもので、子宮内で黄体ホルモンを少しずつ継続的に放出し続ける器具です。これにより子宮内膜が薄い状態が維持されて妊娠を防げるという仕組みですが、更年期の月経過多などの治療にも用いられます。一度装着すれば効果は5年ほど続きます。
前述のとおり、ミレーナを装着すると子宮内膜が薄くなるので月経量が減ります。もし外出先で急に生理が来てしまっても、おりものシートでカバーできるくらいの量になったり。精神的にもラクになると思いますし、生理痛も軽くなります。
施術費用は自費診療だと4〜5万円。月経過多や月経困難症と診断された場合は保険適用で1〜1万5千円ほどです。
女性ホルモン補充療法(HRT)のメリットと副作用
ただ、こういう治療に関して抵抗がある方がいるのも事実なんですね。特にホルモン補充療法を怖いと感じる方は一定数いらっしゃいます。
少し話はそれますが、月経困難症の若い患者さんにピルをおすすめしても親御さんに服用を止められるケースはたまにあります。親御さん世代には「ホルモン剤なんて怖い」という意識があるんですね。たしかに私たちが中高生のころは周りにピルを飲んでいる子なんていなかったし、その気持ちもわからなくはないのですが…。ちょうど今、その世代の方々が更年期を迎えているんです。
事実として、女性ホルモン補充療法の副作用で乳がんや子宮体がんのリスクはわずかに上がります。エストロゲンが原因で起こるがんなので、補充すれば罹患率が多少上がるのは当たり前と言えば当たり前なんですけれど。
ただ、どんな薬にもリスクはつきものです。きちんとした研究のうえで安全性が確立されていて、つらい症状を緩和できる効果も証明されているのに「ホルモン」と名前が付いているだけで毛嫌いしてしまうのは、正直もったいないと思います。
私個人としては女性ホルモン補充療法は、やったほうがいいという立場です。だってやっぱり女性ホルモンって、メリットがいっぱいあるんですよ。不快症状が改善されるのはもちろん、肌や髪がきれいになるし骨密度も保てるし。もちろんご本人次第ではありますが、つらい思いや不便を感じているなら婦人科を受診してみてもいいのではないでしょうか。

ちなみに、単に「生理周期を整えたい」というような要望だと自費診療になりますが、つらい症状をともなう「更年期障害」だと診断されたら保険適用になる可能性が高いです。ご自身の体調と医師の判断によるものなので、悩んだらまずは相談に行くことをおすすめします。
女性の体の問題は過小評価されがち!?
またご質問内容から話がそれてしまいますが、更年期症状に悩んでいても病院に行かない方は、まだまだ多いと感じています。『からだにいいこと』が過去に取ったアンケートでも、病院で治療している人は少ないと聞きました。私はこれって、一つには医師のせいもあると思うんです。
医師の世界は長らく男性社会で、男性医師が圧倒的多数でした。女性が痛みや苦しみを訴えても、男性医師には伝わりづらいんですよね。だから、ひと昔前までは「更年期障害なんて病気じゃない」みたいな感覚があったと思います。そういう空気のせいで、ある年代より上の方々には「更年期くらいで病院に行っちゃいけない」という意識が根付いてしまっているんじゃないかな。
妊娠・出産にまつわる諸症状についても「病気じゃないんだから」と言われ続けてきましたよね。最近ようやく、妊娠中から産後に至るまでの女性の負担に世間の目が向いてきて、女性たちも声を上げやすくなりましたけど…。それくらい、女性の体の問題は過小評価されて見過ごされがちです。
それと同時に婦人科ってやっぱりハードルが高いので、できればティーンのうちから“かかりつけの婦人科”を作るのが理想だと思っています。お子さんが通う小児科に婦人科が併設されていて、成長に応じてそのまま受診できたら、患者さんも親御さんも安心できるんじゃないかな。

その先の妊娠・出産も、いずれ来る更年期も…と女性の生涯のかかりつけ医になる病院があったらいいですよね。私は浜田病院(※)をそういう存在にしていきたいと考えています。
最後は自分の夢を語ってしまいましたが、質問者さんの今の体調はいかがでしょうか。もしお困りごとやつらい症状があるようなら、婦人科で相談だけでもしてみることをおすすめします。
※菜実先生が理事長を務める病院。産科、婦人科、不妊治療、小児科等の診療科がある。
山村菜実先生への質問を募集中!
この連載では、産婦人科専門医で美容クリニック理事長でもある山村菜実先生への質問を受け付けます。ご応募いただいた質問の中から選ばせていただき、連載の中で山村先生からお答えします。
産婦人科や美容医療に関するお悩みや質問をぜひお寄せください!
締切:2025年3月31日(月)昼12時まで
*次回記事は3月25日(火)に公開予定です。
[ 監修者 ]

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