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不妊治療や不妊検査はいつ始めるべき?|教えて! 菜実先生

女性特有の病気や医療に関する悩みに医師が答える連載。回答者は、優しく丁寧なカウンセリングで人気の産婦人科専門医、山村菜実さんです。今回のテーマは前回の高齢出産の話から続いて、不妊治療や検査について。

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35歳を過ぎたら不妊治療を考えるべき?

前回の記事「高齢出産について知りたい」では、高齢出産のメリット・デメリットについて、菜実先生の実体験もまじえて教えていただきました。

そのなかで、菜実先生から30代後半の質問者へ向けて「もし子どもを望むなら不妊治療も視野に入れて」との言葉が。治療って何歳から始めればいいの? 具体的な治療法は? 高額なイメージがあるけど費用は? …など、不妊治療の気になる点について聞いてみます。

不妊治療で生まれる子どもは年々増えている

nami04_赤ちゃんイメージ

今、赤ちゃんの約10人に1人は不妊治療で生まれる時代です。それくらい医療の力に頼って妊娠している方が多いんですね。私はそれに大いに賛同しています。

どうして近年、不妊治療で生まれる子どもが増えているのかを考えると、やはり出産年齢が上がっていることが理由でしょう。前回も「生物学的に妊娠しやすい年齢は限られている」とお話ししましたが、現代の女性にとって妊娠に適する時期は、社会に出てさまざまな役割を担う大事な時期と重なっています。 女性は妊娠・出産で肉体的なダメージを負うだけでなく、生んだ後は社会復帰が遠のいてしまう人も多い。だから、今の女性たちが若いうちに結婚や出産を選択しないのは当然とも言えます。

結婚のタイミングで不妊検査を受けて

そんな流れがあって結婚の年齢がどんどん上がっていて、子どもを望む場合はそこからほんの数年間で授からなくちゃいけない。まず最初の1年は自然妊娠にチャレンジして、授からなかったらステップアップして…と考えていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。その間にも年齢は上がり、妊娠率は低下していく。それはとてももったいないので、私としては30歳を過ぎて結婚したなら、同時に不妊治療を視野に入れていいと考えています。

nami04_結婚したカップル

まずは不妊検査から。結婚するときっていろいろな計画を立てると思うので、そこに1つのイベントととして検査を組み込んでおくのはどうでしょう。今はまだ子どもを持つかどうか決めていなくても、いざ欲しくなったときに検査の予約を取るところから始めるのは意外と大変です。だから、結婚のタイミングでえいやっ! と、とにかく検査だけは受けておくといいかなと。

ただ、何年か経つと体調や体質は変わるので、実際に子どもを望む時期が来たらもう一度検査を受けるのが望ましくはありますけどね。

子どもについて夫婦で話し合っておくことが大事

nami04_話し合うカップル

それと、根本的な話になりますが、結婚前に子どもに対する考え方をカップルで話し合うことは必要だと思います。自分が「いつかは子どもを」と考えているのに相手にその気がなかったら、後でつらい思いをしますから。パートナーが同じ方向を向いているどうかによって、今後の不妊治療への取り組み方も変わってきますよ。

不妊治療のクリニックって、どこも混んでいて待たされることが多いんです。そんなとき、カップルで来ている男性の態度で「ああ、この旦那さんは協力的じゃないのね」とわかってしまうことがあります。不妊治療は夫婦のことなのに、明らかに“付き合わされている感”が出ちゃっているんですね。

こんなすれ違いが起きないように、子どもは欲しいか、もし授からなかったらどうするか…などを、夫婦でなるべく早めに話し合っておくことは大事です。

不妊治療の流れ

ここからは不妊治療の流れと具体的な治療法を説明します。初めに不妊検査を行い、希望があれば治療に移っていきます。タイミング法から始めて徐々にステップアップするのか、年齢やその他の条件を考慮して最初から体外受精を行うのかなど、医師やパートナーとよく相談しながら決めていきましょう。

不妊検査

nami03_不妊治療する夫婦

不妊治療を行っている病院やクリニックで、妊娠しにくい特定の原因がないかどうかを調べる検査を行います。不妊カップルの約半数は男性側にも原因があるといわれているため、男女ともに検査が必要。検査項目は医療機関によって異なりますが、おおむね下記のとおりです。

女性側の検査

・基礎体温測定…排卵の有無や時期を知るために基礎体温を記録する。検査を受ける前に、基礎体温を1カ月以上測定してグラフにしていくのが理想的。

・血液検査…性感染症に感染したことがあるか(または今も感染していないか)を調べたり、妊娠に関係するホルモンの値を測定する。

・子宮卵管造影検査…子宮腔内に造影剤を注入し、骨盤内のレントゲン撮影を行う。子宮腔内の形や卵管の通り具合など、妊娠のさまたげになる要因がないかを調べる。

・ヒューナーテスト…子宮頸管粘液と精子の相性を調べる検査。排卵日頃に性交を行い、24時間以内に頸管粘液を採取して、精子の数や運動性を観察する。

上記に加えて、さらに詳しく調べる必要がある場合には腹腔鏡検査や子宮鏡検査、MRIが追加されることもあります。

<男性側の検査>

精液検査…精液の量や濃度、運動率、奇形率などを調べる検査。来院して採取するか、自宅で採取後に持参するかはクリニックによって異なる。

タイミング法

nami04_基礎体温表

医師の指導のもと、基礎体温表と過去のリズムから排卵日を予測。そのうえで排卵日付近に超音波検査や血液検査を行い、排卵のタイミングで性交渉を持ちます。保険適用の場合、タイミング法自体の費用は1,000円前後です。

一般的にタイミング法を6回行っても妊娠しない場合、ステップアップを検討します。ただし、不妊検査の結果や年齢、患者の希望によっては、もっと少ない回数でステップアップしたり、タイミング法自体を行わないケースもあります。

人工授精

nami04_人工授精イメージ

専用の器具を使用して、精子を子宮内に直接注入する方法。排卵日当日に精子を自宅から持参するか、男性が通院して採取し、洗浄し濃縮させた精液を子宮内に注入します。費用は保険適用で8,000円〜10,000円ほど。

精液検査で精子の状態があまり良くない場合やヒューナーテストの結果が不良な場合、性交渉が難しい場合などに効果が期待できます。ただし、5回行っても妊娠しない場合はステップアップを検討します。

体外受精

nami04_体外受精イメージ

卵子と精子を体外に取り出し、培養液に入れて受精させ、順調に発育した「胚」を子宮内に移植する方法。卵管が詰まっていたり精子の機能に問題がある場合などのほか、不妊の明確な原因がわからない場合にも選択されます。

費用は40歳未満の女性なら1子につき6回まで、40歳以上43歳未満なら1子につき3回まで保険が適用され、1回につき12〜20万円程度。採れる卵子の数や、育った胚を凍結するかどうかなどで料金は変わります

体外受精の妊娠率も加齢とともに下がっていくので、35歳を過ぎて妊娠を希望する人は、はじめから視野に入れてよい治療です。

不妊治療とメンタルケア

ここまで、不妊治療に対する私の考えも織り交ぜながらお話ししましたが、個人的に不妊治療にはメンタルケアも必要だと感じています。

nami04_不妊治療のメンタルケア

医療の力をもってしても、妊娠できるチャンスは多くて1年に10回程度。生理が来れば「今回もダメだった…」と落ち込んでしまうのは当然です。治療に伴う肉体的、金銭的な負担もありますし、男性にもプレッシャーはかかります。そういった負荷を抱える患者さんのメンタルを、不妊治療のクリニック内でケアできたらいいのにと思っています

私の身近にも「2人目が欲しいけどなかなかできないから不妊治療の相談に行ったら、次の診察日までの間に自然妊娠できた」という人がいます。偶然かもしれないけれど、医療機関に相談したことで精神的にラクになって、妊娠に良い影響があったのかもしれませんよね。それほどメンタルは体調に影響を及ぼしますから。

nami04_妊婦

保険の仕組みもあって今はまだ踏み込めていませんが、私が理事長を務める病院でも不妊治療にまつわるメンタルケアについて考えていきたいと思っています。

山村菜実先生への質問を募集中!

この連載では、産婦人科専門医で美容クリニック理事長でもある山村菜実先生への質問を受け付けます。ご応募いただいた質問の中から選ばせていただき、連載の中で山村先生からお答えします。

産婦人科や美容医療に関するお悩みや質問をぜひお寄せください!

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