
「シワ」を改善するには?ハリのある肌をつくる食養生と顔のツボ|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「シワ」がテーマ。いつまでも若々しい肌でいるための東洋医学のセルフケアを紹介します。
目次
女性は「7の倍数」の年齢ごとに体が変化
年齢と共に気になりはじめる顔のシワ。加齢によってあらわれるシワなどの肌の衰えや体の症状は、五臓六腑の「腎」が大きく関係しています。腎は、成長、発育、生殖能力、ホルモン分泌、老化などを司り、人が生きていくための源になっています。
東洋医学では、腎のエネルギーが増すとともに成長し、腎が衰えると老化が進むとされ、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢で体の変化が訪れると伝わっています。
女性が身体機能や性機能のピークを迎えるのが28歳。35歳からは、腎の衰えにより肌や髪が衰えはじめ、美容面にも変化があらわれます。42歳からは、シミやたるみが増え始めます。

シワは、腎のほかに「脾(胃腸)」も関係しています。腎は肌の土台となる真皮層、脾はうるおいを守る表皮と関係があるともいわれ、腎と脾の両方が衰えたり弱ったりすることで、シワができやすくなっていきます。
深い呼吸と栄養が元気な体をつくる
腎には、生まれたときに両親からもらった生命力が貯蔵され、これを「先天の精」といいます。先天の精は生まれ持ったものなので、個人差が大きく、総量が多い人は元気で若々しく、少ない人は老けて見えやすい傾向があります。
しかし、もともと先天の精が充実している人でも、不摂生かつ不規則な生活を続けていると、体や肌の老化が加速。シワができやすくなり、年齢よりも老けてみえてしまいます。
一方、脾(胃腸)は「後天の精」をつくる場所で、口から取り入れる食べ物の栄養により、活動するために必要な元気をつくりだしています。
「シワ」改善に! “腎と脾”を労わるセルフケア
シワを改善・予防するには、生命力の元になる腎と、食べ物から元気をつくる脾(胃腸)の両方を労わる生活が大事。食事やツボ押しなど、できるセルフケアから始めてみましょう。
【食養生】腎と脾を補う食べ物でシワ改善
腎にいいのは、黒い食べ物や塩辛い味の食べ物、果実や種子など。脾(胃腸)の働きを助けるのは、食材そのものの甘味が感じられる食べ物。例えば、ごはんやおかずに黒ゴマをふりかける、お米にとうもろこしやさつまいもを混ぜて炊くなど、養生食材を食事に取り入れてみましょう。
【腎を補う食べ物】
黒い食べ物…黒ゴマ、黒豆、黒米、黒きくらげ、烏骨鶏(うこっけい)など
塩辛い食べ物…牡蠣、貝柱、エビ、豚肉など
種実類…クルミ、栗、カシューナッツ、クコの実など
そのほか、腎を補う働きのある食べ物…山芋、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、桑の実(マルベリー)、ブルーベリー、ぶどう、プルーン、スズキ、太刀魚、すっぽん、骨付き肉、ラム肉など
【脾(胃腸)を補う食べ物】
お米、さつまいも、大豆、とうもろこし、じゃがいも、かぼちゃ、りんごなど
【顔のツボ押し】7つのツボでハリのある肌に
顔のツボ押しは、美容のお悩みにも効果的です。ツボ押しをすることで血流が改善し、肌のハリを保つ手助けになります。顔はデリケートなので、力強く押さないことがポイント。シワのお悩み別に7つのツボを紹介します。

押し方(すべて共通):自分が押しやすい指の腹をツボに当て、やさしく押して離すを数回繰り返します。左右対称の位置にツボがある場合は、両方を押します。
【目尻のシワ】
瞳子髎(どうしりょう):目尻から少し外側にある、ややくぼんだ部分。
絲竹空(しちくくう):眉尻の外側のややくぼんだ部分。
【ほうれい線】
迎香(げいこう):小鼻(鼻柱の左右のふくらみ)の脇。
地倉(ちそう):口角から指1本分程度外側の位置。
【マリオネットライン】
夾承漿(きょうしょうしょう):下唇の下のくぼんだ部分から、左右に指1.5本分ずれた位置。
地倉(ちそう):口角から指1本分程度外側の位置。
【眉間のシワ】
印堂(いんどう):眉間の真ん中のややくぼんだ部分。
攅竹(さんちく):眉頭のややくぼんだ部分。
【生活習慣】睡眠・疲労回復・ストレスケアを大切に
睡眠不足や過労が続くと、腎は消耗し、「先天の精」が失われていきます。質の良い睡眠を十分にとり、疲れたら休む、体を冷やさない、ストレスを溜めないことが腎を守り、若々しい肌をつくります。
東洋医学的には、23時~朝5時はターンオーバーやデトックスに関わる臓腑が活発に働く時間帯。シミ予防のためには、23時までの就寝がおすすめです。
また、脾(胃腸)を労わるために、食事は腹八分目を心掛け、温かくてあっさりしたものを食べましょう。冷たいものの飲み過ぎ食べ過ぎにも注意を。
今月の養生ポイント:春はストレスケアを。心の養生でお肌も美しく
目尻の小シワやほうれい線は、加齢によるものが大きいですが、眉間のシワは、怒りやストレスなどが関係しています。イライラしたり、緊張が続いたりして、気づかないうちに眉間に力が入りやすくなっていませんか? パソコンやスマホの使いすぎで目もとに力が入りすぎるのもシワの原因になります。
しかも春は、気(エネルギー)の巡りを司る「肝」に負担がかかりやすい季節。ストレスによって肝に蓄えられた血が不足すると、ますますイライラや不安が強くなり、メンタルが不安定に…。
眉間の“怒りシワ”を深くしないためにも、春はゆっくりしたペースで過ごすことが大切です。ハーブティーやレモンティーなど、香りのいいドリンクは滞った気を巡らせる効果があります。イライラしたら、自分の好きな香りのドリンクを飲んでみましょう。心の養生で、表情はいつもおだやか、お肌も美しくなれますよ!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ