PMSの女性に届けたい!セルフモニタリングツール「Monicia」ができるまで/連載Vol.2
「からだにいい仕事人」は、健康を取り巻く業界で働く人へスポットを当てた企画です。身近にある「からだにいい商品やサービス」がどんな風に作られたか、その開発秘話や思いをインタビューしてまいります。 第2回は、PMSに悩む女性に向けた商品開発に取り組むコニカミノルタのお二人にお話を伺いました。
目次
実は多くの女性がPMSに悩んでいる
PMSという言葉をご存知でしょうか?生理前に現れる、身体や心の様々な不調のことをPMS(月経前症候群)といいます。
日本医療政策機構が発表した、「働く女性の健康増進に関する調査2018」によると、働く女性の約2人に1人がPMSや月経に関する不調に悩んでいると言われています。
【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」 -日本医療政策機構(Health and Global Policy Institute) グローバルな医療政策シンクタンク
そんなPMSに悩む女性に向けて商品を開発しているお二人にお話を伺いました。
右:江尻 綾美さん。コニカミノルタ株式会社BICJapan
情報機器事業のUI制御開発、ソフトウェア開発プロセス改善支援、製品ライフサイクル全体での環境配慮設計業務を担当後、ヘルスケア領域の新規事業企画業務に従事。産学連携を活用したオープンイノベーションでの事業立ち上げ加速に向けBICJapanに異動。Moniciaのプロジェクトリーダーを担当。
左:大原 徳子さん。コニカミノルタ株式会社BICJapan
フィルムの基礎研究を経て、基盤技術の他業界への応用を検討。その後マーケットリサーチャーとして、マクロ動向、業界動向、ユーザーニーズ調査等に携わり、未来洞察やデザイン思考のスキルを学ぶ。オフィス新規事業担当後、女性視点での新規事業創出のためBICJapanに異動。
――お二人が取り組んでいるMoniciaプロジェクトについて教えてください。
江尻:モニシアは、PMSのお悩みを抱える方向けのセルフモニタリングツールです。就寝中の腹部の温度で低温期・高温期を把握するデバイスと、心身の変化を記録し、周期的な変化に気づくためのアプリがセットになっており、蓄積した記録は、周期単位、カレンダー単位でチェックすることができます。
就寝前に1日を振り返って、アプリで「ココロ」と「カラダ」の調子を入力。
2つの入力の他に気になる症状を選択し記録します。
卵型のクリップ式のデバイスをパジャマのズボンに取り付けて計測ボタンを押すと、計測を開始します。温度は、腹部の低い温度と高い温度の相対値を計測するので、肌着を着けていてもOK。眠っている間の腹部の温度を10分毎に、最大8時間計測します。
朝起きて、デバイスを取り外してから送信ボタンを押すと睡眠中の温度データがアプリに送られます。
毎日アプリとデバイスで記録を続けていくと、低温期・高温期の周期的な変化とココロとカラダの変化の波が見えてきます。
イライラ、不安、むくみ等の気になる症状の入力結果は1つずつ症状の強さがわかる形で表示されます。
クラウドファンディングで目標金額を達成
江尻:実際に製品を作るにあたっては、開発資金の調達と啓発活動の両立を目指し、クラウドファンディングでの呼びかけを開始しました。
SNSを中心に、「こんなの欲しかった!」「悩みを解決したい」「応援したい」といった声が広がっていき、目標金額を達成。最終的には目標金額を大きく上回る支援が集まりました。
クラウドファンディングを始めたことで、本当に悩んでいる方に声が届いたことがとても嬉しかったです。
自身の体験から、周期的なココロとカラダの変化がわかるセルフモニタリングのサービスを構想
――コニカミノルタといえば、コピー機などのオフィス機器のイメージが強い会社ですが、なぜこのプロジェクトが始まったのでしょうか?
江尻:オフィスにまつわるソリューションの中から、オフィスのストレス・ヘルスケアについては以前から社内で注目されていました。
私が所属しているBIC(Business Inovation Center)という部署は、お客様のお困りごとを解決するサービスをいち早く世の中に届けていくような新規事業を提案していく組織です。
私自身が長い間、原因のわからない不調に悩まされた経験からこのプロジェクトを立ち上げることになりました。
――いつごろから開発は始まったのでしょうか?
江尻:2016年4月より京都大学COIにおいて、「女性サポート」の領域での共同研究が始まりました。共同研究では、女性の健康問題として挙げられる月経随伴症状の中で、近年労働生産性への影響が明らかになってきているPMSに着目し、症状を抱えるかたの対処方法の1つとなるセルフモニタリングツールの開発を行いました。
PMSの悩みを抱える女性へのインタビューやアンケートを通して、どのようなサービスデザインが良いか検討を重ねていった中で、清潔感と安心感があり、「無理なく体調記録を続けられること」を大切にしたサービスデザインで開発を進めました。
新規事業の取り組みでの苦労
――新規事業を始めた中で、どんなことに苦労されましたか?
江尻:PMSの対処方法として、セルフモニタリングの大切さを伝えていく点で苦労しました。
「PMSについて知っていただくこと」
「対処方法の一つにセルフモニタリングがあること」
「セルフモニタリングを通して周期的な心と体の変化に気づくことが大切であること」
これらをどのようにお伝えするか、実際にお悩みの方や医療従事者の意見を集めながら進めていきました。
PMSに対する認識は人それぞれ
――この事業を行う中で気づいたことはありますか?
江尻:PMSに悩む女性の割合に関して統計データで把握しておりましたが、本当に困っている方にどのように情報を発信し、サービスを届ければよいのか試行錯誤を繰り返しておりました。
そのような中で、クラウドファンディングでのリアルな応援メッセージをいただき、多くの方が悩みを抱えていて、またMoniciaに期待してくださっていることを実感しました。
大原:驚いたのは、PMSの自覚症状がない方も多いということでした。
自分はPMSではないとおっしゃる方も、詳しくお話を聞くと生理前に身体や心の不調に悩んでいることがあり、「そもそもPMSという言葉を知らない、自覚がない方」「PMSに悩んでいても具体的に対処をしていない方」など、様々なステージの方がいることがわかりました。
今後の取り組みについて
――今後のMoniciaプロジェクトではどんなことを考えていますか?
江尻:啓発活動の一環として、からだにいいことと連携して、月経随伴症状や、PMSに関する基礎知識がわかるムック本『からだにいいことpreco』第2弾の制作(2019年4月発行予定)を進めています。
また、最初の製品をお届けする9月末まで、アプリの改良やWebページでの情報発信も引き続き行ってまいります。
編集部より:クラウドファンディングページには沢山の応援メッセージが!
クラウドファンディングページには、これまでの開発ヒストリーや、応援メッセージを閲覧することができます。 「新着情報」のコーナーでは、最初の製品お届けとなる9月末まで、引き続きPMSに関する情報や、開発状況などを更新中。ぜひご覧ください。