首のこりと痛みを、その場でできるセルフケアで改善 理学療法士が解説
首のこりと痛みが辛く、さらに寒さでこりが強くなる。ひどい時には、めまい、頭痛や吐き気まで…。今お悩みの辛い症状に対して、理学療法士が考えられる原因を解説。その場でできる痛み改善セルフケアとともにご紹介します。
目次
首のこり・痛みの原因は「姿勢、思考のクセ、睡眠不足」
スマホやタブレット、パソコンでの仕事など、インターネットが普及するとともに、どんどん首への負担が重くなってきています。ここに寒さが加わると、さらに首こりがひどくなり頭痛や吐き気といった症状に。
首こりは、筋肉が硬くなった状態が続くために起こります。主なきっかけは、同じ姿勢で長時間過ごしたり、重い物を持つなど何らかのストレスが体に加わること。
体がストレスを感じると交感神経が過剰に活性化するので筋肉への血流が滞り、酸素不足の状態が続いて筋肉が硬くなります。
この状態が、長く続くと、もんでもほぐれにくい重症のこりに。首こりの原因は姿勢だけと考えがちですが、実は思考のクセや睡眠不足も深く関わっています。
悪い姿勢でスマホを見ると首に15kgの負担
まずは姿勢の悪さが首にどれくらいの負担をかけるか解説します。頭の重さは一般的に5〜7kgあると言われており、スイカひとつ分と同等または、500mlのペットボトルなら10本分に相当。この重さを細い首で支えられるように、首の頸椎(けいつい)がカーブしています。背骨全体でみるとS字カーブを描き、これで頭を含める体のバランスをとっているのです。
しかし、姿勢が悪くなると、バランスを取るための首の弯曲が減って首への負担が増加。この状態が長く続き、関節が変形したものが、昨今「ストレートネック」や「スマホ首」と呼ばれているもの。
肩より頭が前に出るだけで、首への負担が2〜3倍に。うつむいたままスマホを見ていると10〜15kgの重さが首にかかります。10kgの米を腕に30分抱えていると、腕だけでなく足腰もパンパンに張って、背中は丸くなりますよね。そんな全身の状態が小さな部位である首に発生していると考えると首のこりや痛みを生じるメカニズムが想像しやすいかもしれません。
思考のクセも首のこりや痛みに影響
首には複数の神経が通っているのですが、なかでも首こりに関係が深いのは自律神経。呼吸や循環、消化、発汗、体温調節などを無意識でコントロールしているもので、交感神経(興奮)と副交感神経(リラックス)の2つがバランスを保って働いています。これにより私たちは意識しなくても、呼吸が止まらず心臓が動き生命維持ができるのです。
この自律神経の交感神経が過剰に優位になると、首こりが起こります。交感神経が優位になると体は興奮状態の戦闘モードになるので、体が緊張して血流が滞り、筋肉が硬く。そのため、悩み事があって、不安で眠れなかった次の日の朝、体がバキバキになります。
悩み事や不安、イライラといった心のストレスは交感神経を刺激します。このストレスは「have to(しないといけない)」という考え方から発生しています。
例えば、
・旦那が帰ってくるまでに部屋の掃除をしなきゃ
・食事は3食きっちり食べないといけない
・長女だからしっかりしないといけない
こんな風に考えていませんか? 普段無意識に考えて行動していることの多くが、「have to」にかたよっていると交感神経が働きすぎて首のこりや痛みに。
交感神経を刺激しやすい「have to(しないといけない)」と反対に、副交感神経を刺激しやすいのは「want to(したい)」という考え方。いつも「have to」で考えるクセのある人は、下記のように「want to」に考え方を上書きしていきましょう。
・旦那が帰ってくるまでに部屋の掃除をしなきゃ
→旦那が帰ってくるまでに部屋をキレイにしたいっ!!
・食事は3食きっちり食べないといけない
→食事は3食しっかり食べたいっ!!
・長女だからしっかりしないといけない
→長女として家族を安心させたいっ!!
ここでのポイントは、「〜したいっ!!」と実感できる理由付けをすることです。最初は多少強引でもOK。まずは自分の思考のクセに気付くことが第一歩です。「しなきゃ」と思っていたら、後から心のなかで「したい」に言い換えるようにしましょう。これで、首こりを防ぐことができます。
睡眠不足だと首こりになる理由
寝不足も、首こりや辛い首の痛みを発生させる原因のひとつ。睡眠不足だと、自律神経の交感神経が活性化します。それが、血流の滞りを招き、首や背中にかけての筋肉が硬く。睡眠は体の細胞を修復して、疲労を回復させる役割がありますが、睡眠が不十分だと疲れが残るため、首の筋肉も回復できずこりになってしまうのです。
首のこりと痛みを改善するセルフケア
辛い首の痛みやこりを、その場で改善できるセルフケア方法をご紹介。まずは、自分の首がどれくらい動くか確認してみましょう。
※動く範囲や痛みの強さには個人差があります。無理のない範囲で行ってください。
<首こりセルフチェック>
まず、イスに背筋を伸ばして座り、天井を見ます。そこからさらに首を後ろに倒し、天井や壁のどこまでが見えるか覚えておきましょう。
次に、あごを鎖骨につけるようにして首を下に向け、あごと鎖骨の間隔がどれくらいあいているかチェックを。
次で紹介するエクササイズを行った後、同じようにチェックをしてみてください。首が以前より上下に動きやすくなっているはずです。
<首こり、首の痛み解消セルフケア>
副交感神経を活性化して、筋肉をゆるみやすくします。そして、首の後ろ側にある筋肉の緊張を緩和。最後に肩甲骨を動かすことで、首をいい位置で支えられるように調整します。
1. 目のリラックス+深呼吸で副交感神経のスイッチON
肩や首の力を抜き、リラックスした姿勢で座り目を閉じます。その上から両手のひらで目をおおって光を遮断し30秒深呼吸。目を閉じた状態にも関わらず、線や光が見える場合は浅めのリラックス状態。真っ暗になっているほど深くリラックスできているサインです。床に寝て行ってもOK。
2.首の筋肉の緊張をほぐすツボ押し
頭頂から後頭部を下にたどって、くぼんだところに人差し指を当てます。そこから左右の耳の付け根に向かって指を動かしていきます。押すというより、当てるという感覚で10回。頭が前に動く時は、強く押しすぎなので注意を。
3. 肩甲骨回しで筋活動活性化
2リットルのペットボトルなど、2〜3kg前後の重さの物を両手で持ち、耳の横から後頭部を通るように顔のまわりを1周。左右交互に5回ずつ回していきます。肩だけでなく、肩甲骨がしっかり動いていることを確認しながら行って。痛みがある場合は重りを持たず、手を組んで耳の高さより高い位置でまわしたり、手の組み方をゆるめて調整を。
どんな痛みなら病院に行くべき?
下記の症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
・安静にしていても首の痛みが続く
・腕や手がしびれる
・吐き気やめまいがする
・痛みやしびれで生活に支障が出ている
・痛みやしびれが1ヶ月以上続いている
ただし、「激しい頭痛やめまい、嘔吐がある」場合は、すぐに病院を受診しましょう。
病院は、近くに整形外科や神経内科があればそちらへ。近くにない場合は、かかりつけ医にまず相談をしてください。病院を受診して「特に問題ない」と分かるだけで、安心して、首こりによる痛みが軽減されることもあります。
整骨院や整体、マッサージなどに行く場合でも、先に病院で受診を。その結果を伝えてから施術を受けるほうが、施術を受ける側はもちろん、施術をする側にとっても安心です。
ヘルスコーチとは?
ヘルスコーチとは、アメリカを中心に世界でニーズが高まっている職業です。健康の悩みに対し、食事、住環境、人間関係、キャリアなど、人生に関わる項目全体から答えを導き出して改善します。マラソンの伴走者のように悩みを抱える人と同じ立場に立ってコーチングしていくのが特徴。ダイエットのほか、摂食障害、心身の疲労、人間関係などヘルスコーチによって専門とするジャンルは多岐に渡ります。
https://www.integrativenutrition.com/
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