イライラ・不安の原因は?「メンタル不調」改善テク|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「メンタル不調」がテーマ。イライラや不安など、心の疲れ対策を紹介します。
目次
もしかして、心のお疲れサイン?「メンタル不調」セルフチェック
職場や家庭で感じるイライラ・モヤモヤ、先の事への不安、何に対してもやる気が出ない、無気力など、多くの現代人が感じている「メンタル不調」。
なんとなく心が疲れているな…と感じている人は、まずは「メンタル不調」セルフチェックを。多く当てはまった人ほど、心を労わる時間が必要です。
●「メンタル不調」セルフチェック
□朝すっきり起きられない
□ボーッとしてしまう
□前より小さなことでイライラしやすい
□寝つきが悪い、夜中に目が覚める
□十分に眠った気がしない
□疲れやすくなった
□色んなことが心配で仕方がない
□何もしたくない(無気力)
□前より物事に興味がなくなってきた
□前より食欲が落ちた
□便秘が続く
□下痢が続く
□便秘・下痢を繰り返す
※自分だけでなく、上記のチェックリストで家族や友人など、周りの人のメンタルチェックもしてみましょう。
イライラ・不安…「メンタル不調」の原因は?
東洋医学で、メンタル不調に大きく関わるのは「肝」と「血」。「肝」が元気で「血」が充実してればメンタルが安定、逆の状態ならばメンタルが不安定になります。
イライラしやすいのは「肝」のがんばりすぎ
東洋医学でいう「肝」とは、西洋医学の「肝臓」とは少し違い、気・血・水の循環や、感情のコントロールなどに関わっています。
「肝」ががんばりすぎると、気が滞り、イライラしやすくなります。怒りの感情が抑えきれないメンタル不調は、「肝」が関係しています。
ちなみに東洋医学の五行色体表(※)で、夏は「心」、秋は「肺」、冬は「腎」に対応しているのに対して、春は「肝」の季節に当たります。春頃は誰でもイライラしやすく、心がヒートアップしやすい時期といえるので、覚えておくだけでも心がラクになるでしょう。
※五行色体表…自然界や人間の状態を5つのカテゴリーに分けた表で、東洋医学の診断に使用します。
「血」が不足すると心が不安定になる
「肝」は「血の貯蔵庫」といわれ、「肝」ががんばりすぎると、「血」も不足します。血もメンタルに関係するため、不足すると、不安感が強くなってきます。
何事も心配で仕方がない、不安な気持ちが強いという人は血が不足している可能性があります。
また、メンタル不調は「心→体」の順に現れます。初めは、イライラ・不安・落ち込みなど、心が不安定になり始めます。
そのままがんばりすぎると、あるとき体も疲れてきて、だるい、朝起き上がれない、体が動かないといった不調に。さらに、それでも無理しつづけると、あるときパタリとやる気を失い、無気力になってしまいます。
体まで影響が及ばないうちに、「心がちょっと疲れたな…」と思ったら休息することが大切です。
東洋医学的「メンタル不調」改善法・予防法
東洋医学の視点から、メンタル不調を改善するためにおすすめのセルフケアをご紹介します。
睡眠優先の生活で「血」を充実させる
「血」は眠っている間に作られます。東洋医学では、睡眠中に体を掃除して、きれいな血を肝臓に蓄える時間と考えます。心の働きはもちろん、正常な判断をする脳を健康に保つためにも血の充実度は大切です。
たくさん考え事をして脳を使うと、血が不足した状態に。それなのに睡眠時間が短いと、不足した血を十分に補うことができません。
ストレスを感じている、メンタルが不安定と思ったときほど、30分でもいいので早く寝てください。血が充実するだけでイライラが減ったり、心が穏やかになったりして、メンタルの安定を感じられるでしょう。
赤いもの・黒いもので「血」を補う
食べることもメンタル不調には大切で、食べ物からいただく力が心の栄養になります。
東洋医学では、赤いものと黒いものが血を増やすと言われています。メンタルが不安定なときほど、食事量を減らさずにしっかり食べ、「赤」と「黒」の食材を摂り入れてみましょう。
一般的に「鉄分豊富」といわれている食材もおすすめです。
赤いもの…なつめ、クコの実、プルーン、いちご、トマト など
黒いもの…黒ゴマ、ひじき、牡蠣 など
鉄分豊富な食材…レバー、ほうれん草、小松菜 など
生理中はがんばらないで自分を甘やかす
女性は毎月生理があるため、そもそも男性に比べて血が不足しやすく、生理中は特に足りない状態に。生理中にイライラしやすく、人に当たってしまうのも、血の不足が関係しています。
血が足りない状態で無理をすると、ますます枯渇してイライラしたり、落ち込んだりとメンタル不調が悪化します。生理中は、1カ月の中で一番自分を甘やかしていい期間。家事や仕事も無理をせずに、ゆっくり過ごし、やるべきことは生理が終わってから考えましょう。
スマホの使い過ぎをやめて目を労わる
目を酷使することも、血を不足させる要因になります。スマホやパソコンの使い過ぎは、東洋医学的にもNG。
心と脳の安定のために、時間を決めて使用する、眠る2時間前からは使用しないなど、自分ルールを作り、なるべく目を労わりましょう。
また、メンタルが不安定なときに、あれこれスマホで検索するのもやめましょう。気持ちはわかりますが、余計な情報が多いほど、ますます不安が大きくなるだけです。
不安や悩みをノートに書きだす
イライラして落ち着かないときや、ストレスが溜まって心がモヤモヤしたときにおすすめなのがメモ。不安に思っていること、嫌なこと、悩んでいることなどを、何でもノートに書いてみてください。
ノートがなければ、スマホのメモ機能でもOK。心の中のモヤモヤを吐き出して文字にするだけで、不思議と冷静になれます。
信頼できる人に話してみる
メンタルの悩みは、なかなか人に話しづらいですが、ずっと一人で抱えていては、心がパンクしてしまいます。
そうなる前に、友人でも職場の先輩でも家族でもいいので、信頼できる人に話してみましょう。「こんなこと相談してもいいのかな」と思う必要はありません。
たった数分なのに、人に話を聞いてもらったら、なんだかスッキリしたという経験はありませんか? 心の中に詰まったものを人に話すこともメンタルの安定には必要です。
「メンタル不調」に効果的なツボ4選
最後に、メンタル不調におすすめのツボを4つご紹介します。どれも、イライラや不安、落ち込みなどで心が弱っているときに押してみてください。自分が押しやすいツボでOKです。
神門(しんもん)
ツボの場所:手首の内側、折れ曲がるシワの線上にあります。小指側にあるすじの親指寄りが神門。
押し方:親指を神門にあて、残りの指で手首をつかみます。イタ気持ちいい程度の強さで10回程度押します。両手にあるので、どちらも刺激しましょう。
内関(ないかん)
ツボの場所:「手首を曲げたときにできるシワから指3本分」と覚えましょう。手首の内側、縦2本のすじの間にあります。
押し方:ひじ側から、すじの間に指先をぐっと押し込むように押します。
労宮(ろうきゅう)
ツボの場所:手を握って、手のひら側の人差し指と中指の指先が手のひらに当たる中点。
押し方:手首側から指先へ向かって親指で押し上げるイメージで、イタ気持ちいいと感じる程度に押します。ズーンと心地よい痛みを感じるところを探しましょう。
膻中(だんちゅう)
ツボの場所:胸の真ん中、左右の乳首を結んだ線の真ん中。
押し方:「軽い痛み」を感じる程度に、指でゆっくり押すか、手を添えて温めるだけでもホッとします。
今月の養生ポイント:心と体はつながっている「心身一如(しんしんいちにょ)」
東洋医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。これは、心と体は一緒という意味。心の調子が落ちたら、体の調子も落ちるし、反対に体の調子が落ちたら、心も調子も落ちるということを表しています。
しかし、メンタルが落ち込むことがあっても、体が元気であれば、体力で心をカバーしたり、落ち込んだ心を引き上げたりできますし、その反対もあり得ます。
体は体、心は心ではなく、心と体は常に関係を保ち、影響しあっているのです。だからこそ、どちらかが不安定なときは、“共倒れ”にならないように早めに気づいて休息をとることが大切。
家事に仕事に、子育てに、家族の生活の要として日々忙しく働いている女性のみなさん。つい自分のことは後回しになりがちですが、メンタル不調を防ぐためにも、時々自分の心の声を聞いてあげてくださいね。
イラスト/植松しんこ
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