インフルエンザウイルスの感染力を奪う「紅茶ポリフェノール」の効果
11月1日は「紅茶の日」。紅茶は、インフルエンザウイルスの感染力を奪う効果や、血糖値・脂質の吸収をコントロールするなど、健康効果が次々に明らかになっています。そんな紅茶の成分「紅茶ポリフェノール」のすごい効果や、おいしい淹れ方を、日本紅茶協会の田中哲さんに教えていただきました。
目次
タピオカ流行で、輸入量がアップ!
若者の間でタピオカミルクティーがブームとなったり、コンビニでもペットボトルの紅茶飲料が増えたりと、紅茶市場がどんどん拡大しています。
「紅茶はほぼ海外から輸入しています。2017年までは、輸入量が14,000~15,000t台だったのが、昨年2018年は16,000t台に。2019年も前年に比べて108.6%増える見込みです」と、日本紅茶協会の田中哲さん。
確かにコンビニでは紅茶ドリンクが増え、コーヒーチェーンでもおいしいメニューが定番になり、さまざまな種類の紅茶を楽しめるようになりました。それに加えてブームの追い風になっているのが、紅茶の健康効果です。
インフルエンザウイルスの感染力を弱める
季節的に、そろそろ心配なのがインフルエンザ。今年は例年よりも、流行が早まるともいわれています。
「国立感染症研究所 協力研究員の中山幹男先生の研究によると(※1)、紅茶に含まれる成分『紅茶ポリフェノール』が、インフルエンザウイルスの感染力を弱めることがわかっています。実験で、インフルエンザウイルスを入れた液体の中に、紅茶を入れたところ、10秒ほどでほとんどのウイルスの感染力が消滅してしまったそうです。紅茶ポリフェノールは、ウイルスのとげの部分に付着する力があり、すばやく感染力をストップ。さらにすごいのは、どんな型のインフルエンザウイルスでも効果を発揮することです。インフルエンザは、熱が下がっても数日間は感染力があります。紅茶を飲んで口内のウイルス感染力を弱めることができれば、家族などの周りの人への二次感染を予防できる可能性があります」(田中さん)
ただし、紅茶を飲んでいればワクチンは不要、病院に行かなくていいということではありません。あくまで冬の健康づくりのひとつとして紅茶を取り入れましょう。
※1 参考:紅茶Labo.より http://www.tea-a.gr.jp/labo/topics/topics01.html
血糖値・脂質をコントロール!
食事をすると、血糖値が上昇します。炭水化物や甘い物などの糖質に偏った食事で、血糖値が高い状態が続くと、肥満をはじめ、メタボリックシンドローム、糖尿病などの生活習慣病につながります。
「紅茶に含まれる成分『紅茶ポリフェノール』は、健康のカギとなる、血糖値の上昇を抑える働きもあります(※2)。食べたものは、アミラーゼなどの消化酵素で分解されますが、紅茶ポリフェノールには、この消化酵素の働きを阻害することがわかっています。つまり、摂取した糖質が分解・吸収されないまま排出されるため、食後血糖値の上昇をおさえると考えられています」
さらに紅茶ポリフェノールには、脂質をコントロールする働きもあります。
「アミラーゼと同じように、紅茶ポリフェノールが消化酵素のリパーゼの働きを阻害(※3)。脂質の多い油物や、甘い物を食べるときに紅茶を飲むと、脂肪の吸収を抑えてくれるのです。血糖値や脂質が気になる人や、肥満を予防したい人に、食事と一緒に紅茶を飲むことをおすすめします」
※2 参考:紅茶Labo.より http://www.tea-a.gr.jp/labo/topics/topics02.html
※3 参考:紅茶Labo.より http://www.tea-a.gr.jp/labo/topics/topics03.html
独自の製造で生まれる「紅茶ポリフェノール」
さまざまな健康効果を秘めた「紅茶ポリフェノール」は、紅茶ならではの製造工程で生まれます。香り豊かできれいな赤色の紅茶ができあがるまでを、田中さんに教えていただきました。
紅茶ができあがるまで
(1)摘採(てきさい)
…葉の手摘み作業。輸入している紅茶のほとんどが、アッサム種の葉からできている。新芽と2枚の若葉を手摘みする。
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(2)萎凋(いちょう)
…摘んだ葉に風を送り、水分を減らす工程。この工程で、紅茶の豊かな香りが準備され、さらに「紅茶ポリフェノール」が生まれる。
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(3)揉捻(じゅうねん)
…葉をもむ。この工程で、葉の組織細胞をもみつぶして酸化発酵を促進。茶葉に含まれる成分を溶け出しやすくする。
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(4)発酵
味や香りなどが適度な状態になるまで、酸化発酵を進める。
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(5)乾燥
乾燥機に移し、熱風で乾燥させる。
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(6)等級区分
茶葉をふるいにかけて形やサイズをそろえる。
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(7)配合
安定した品質と価格で提供するために、茶葉をブレンドする工程。
産地でここまでの工程を経て、輸入されます。日本の一番多い輸入先はスリランカ。二番目がインド、三番目がケニア。紅茶は主に、赤道に近い亜熱帯地域で生産されています。
「緑茶も紅茶も葉っぱは同じですが、製造工程が違います。緑茶の場合は、摘採したらすぐ蒸気で蒸してきれいなグリーン色を残します。一方紅茶は、萎凋(いちょう)や揉捻(じゅうねん)の工程により、紅茶ポリフェノールが生まれ、豊かな香りや紅茶ならではの赤い色が作られます。葉っぱそのものの品質も大切ですが、この工程技術が高いほどおいしい紅茶になります」(田中さん)
おいしさが倍増する「黄金ルール」
ここまでは、紅茶の健康効果や「紅茶ポリフェノール」が生まれる製造工程をご紹介しました。最後に、紅茶がもっとおいしくなる、“黄金ルール”を田中さんに教えていただきました。
おいしい紅茶の淹れ方
(1)お湯はよく沸かす
使うのは水道水でもOK。100度までしっかり沸かして、沸かしたてのお湯を使う。
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(2)ポットとカップを温めておく
できればポットを準備して、ポットとカップにお湯を通して温めておく。温かいポットを使うことで、茶葉がしっかり開いておいしい香りと味わいが出る。
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(3)適正な茶葉の量を使う
1杯あたりティースプーン1杯(2.5~3g)の茶葉をポットに入れる。茶葉は多すぎると味が濃くなってしまうので、おいしい紅茶のためには量もポイント。
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(4)お湯を注いで蒸らす
沸かしたてのお湯をポットに注いだ後、蒸らし時間をとる。ダージリンなどの茶葉が大きいものは3~4分、セイロンなどの茶葉が小さいものは2~3分を目安に。最後は茶こしを使ってカップに注ぎ分ければ、香り豊かなおいしい紅茶が完成!
ティーバッグの場合も、あたためたポットを使うとおいしさがアップ! 時間がなくてマグカップを使うときも、ティーバッグを入れた後、カップ用のフタや、なければソーサーなどで多少蒸らし時間をおくだけでも味わいが違います。
インフルエンザ対策、肥満予防にも効果的な紅茶の秘めたパワーをご紹介しました。毎日忙しくしていると、つい自分のために休憩するのを忘れてしまいます。たまには、おいしい紅茶を淹れて、リラックスタイムを過ごしてみませんか。体調を崩しやすい秋冬の健康習慣にどうぞ!
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