漢方っていいの?「ツムラ漢方記念館」見学で、魅力をリサーチ!
茨城の牛久大仏の近くにある「ツムラ漢方記念館」。ツムラの茨城工場敷地内にあります。からだにいいことWeb編集部が、漢方の歴史を学ぶと共に、ここでしか見られない生薬の実物や、生薬倉庫、工場などを見学してきました! その様子をレポートします。
「漢方」は中国生まれ、日本育ち
みなさんは漢方薬を服用したことはありますか? 女性の不定愁訴や生理・更年期などの婦人科系のお悩みで処方されることも多く、男性よりも女性のほうが身近に感じることが多いのではないでしょうか。今回は、漢方の歴史を学べたり、生薬見本を見学できたりする「ツムラ漢方記念館」を訪れました。
案内してくれたのは、ツムラ漢方記念館・館長の中島実さん。
そもそも「漢方医学」とは、漢方薬などを治療に使う日本の伝統医学のこと。5~6世紀頃に中国大陸から日本に伝わり、1400年以上をかけて日本の気候風土や日本人の体質に合うように、独自に発展したものを「漢方医学」や「漢方」といいます。「漢方=中国のもの」というイメージですが、“中国生まれ、日本育ち”だったんですね!
漢方医学と西洋医学の違いとは?
漢方医学は、人間全体を見てその人が発している情報を見ながら、その人にあった治療をしていくもの。そのため「個の医学」といわれることもあるそうです。一方西洋医学は、分析的な手法や見方で、病巣に対して局所的に対処していくもの。
漢方医学は、長い年月をかけて独自に発展してきましたが、西洋医学の広がりと共に明治時代に一度衰退。しかし、漢方医など数々の医師が漢方の必要性を訴え、昭和に入ると再び注目を集めるようになりました。現代では、さまざまなエビデンスが解明され、多くの診療科で漢方薬が使われています。
漢方記念館では、日本最古の医学書といわれる「医心方(いしんほう)」のレプリカを見ることができました。「医心方」は、丹波康頼(たんばのやすより)によって、なんと今から約1000年も前に書かれたもの。そんなに昔から、日本人に合う漢方薬が研究され、現代に伝わっているんですね!
そのほか、現存最古の中医学古典のひとつ「黄帝内経(こうていだいけい)」や、日本で最初の解剖書「蔵志(ぞうし)」など、歴史ある医学書を目にすることができました。
現存最古の中医学古典のひとつ「黄帝内経(こうていだいけい)」。(展示品は日本刊本)
処刑された死体を解剖。観臓図を作成させて記録した解剖書「蔵志(ぞうし)」。(展示品は刊行本を複製したもの)
自然の恵みから作られる119種の生薬
ツムラの医療用漢方製剤で使われる原料の生薬は、119種あるそうです。生薬は、すべて自然にあるもの。植物の果実、根、種子、葉などが使われます。そのほか、きのこ類や鉱物、貝殻など、長い歴史の中で効き目があるとされたものが原料となっています。
119種ある生薬のうち、116種がずらりと展示されています。
実際に生薬に触れたり、匂いをかいだりできるスペースも。のぼせ感やイラ立ち、精神不安などがある女性に効果的な「加味逍遙散(かみしょうようさん)」の生薬。
月経痛や肩こりなどに効果的な「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」の生薬。「桃仁(とうにん)」は桃のタネ。
生薬を手に取り、触ったり匂いをかいだりすることができます。
原料となる生薬を目の前にして、数ある漢方薬すべてが、自然の恵みから作られているんだと実感しました。
めずらしい道具も! 写真は、生薬を細かく砕く薬研(やげん)。
ちなみにツムラの医療用漢方製剤は、生薬原料の80%が中国で生産されています。残りの15%は日本、5%はラオスなどで作られているそうです。原料生薬の栽培方法や農薬の使用、品質管理、製造までをコントロールすることで、どこで調達・生産しても一定の品質の漢方薬ができあがります。
約230トンの生薬を2週間で消費
続いて見学したのが、大量の生薬を保管する生薬倉庫。生薬の劣化を防ぐといった品質管理のために、倉庫内の気温はひんやりと涼しい温度が保たれています。
今回見学した1室だけで、約230トンもの生薬が保管され、たった2週間でこの量が消費されるとのこと。相当の量の生薬が日々生産に使われていくことになります。すべての生薬は、IDカードで細かく管理されています。
漢方薬というと、煎じて飲むのが面倒くさそう、飲みにくそうと思っている人も多いですが、ツムラの漢方薬は、煎じたエキスを飲みやすい「エキス顆粒」にしてあるのが特徴。その生産工程は、最先端の設備の中で行われています。その一部を見学させてもらいました。写真は、エキス顆粒のもとになる粉末(エキス粉末)を作る工程を、24時間監視するための中央制御室。
各処方ごとに、複数の生薬が一定に調合された後、抽出して得たエキスを濃縮、乾燥させるまでの工程を、最新システムと共に、人間の目で正常に動いているかをチェックしています。ここで生産したエキス粉末は、次の工程へと運ばれ、エキス顆粒となります。
こうしてツムラの漢方薬が作られているんですね。原料の生薬は、エキスを抽出した後に残渣(ざんさ)という残りカスが出ます。残渣は火力発電の燃料などになり、100%リサイクルされています。
最後に、約700坪の土地で薬用植物を育てる「薬草見本園」も見学できました。
今回見学した「ツムラ漢方記念館」と「茨城工場」の敷地は、東京ドーム4つ分の広さにもなるんだとか! 残念ながら現在、一般見学者向けの見学は行っていないそうなのですが、ツムラのホームページで、くわしい漢方の歴史や生薬について紹介されています。自分の体質チェックもできるので、体調が気になる人や漢方で不調を改善したい人はチェックしてみてくださいね。
■ツムラ漢方記念館
(ツムラ 茨城工場敷地内)
茨城県稲敷郡阿見町吉原3586
ツムラ お客様相談窓口
TEL:0120-329-930