「親との関係」どう向き合う?|玉井仁さん ラク生き相談室 出張版
雑誌『からだにいいこと』との連動企画である本連載。臨床心理士の玉井仁さんが、読者のみなさんのお悩みを通し、「ラク」に生きるための考え方・コツなどをお伝えします。今回のテーマは「親との関係」です。
目次
今回のお悩み:亭主関白な父にイライラ、何も言わない母にもモヤモヤ…
T・Kさん(37歳)のお悩み
父の足が不自由になり、介護が始まりました。母が中心になり、身の回りの世話をしています。
ところが、父は昔ながらの亭主関白タイプ。昔から、母にものを頼むときでも怒鳴ったり、お礼を言わなかったりします。
父の態度にもイライラしますが、文句を言わず父に従う母にもモヤモヤすることが。
あるとき、父の病院に付き添っていた母が、鬼のような形相をしていました。ガス抜きをしてあげないと母がつぶれてしまうと思い、その日以来、できるだけ愚痴を聞くようにしています。
けれど私も、愚痴を聞き続けるのはつらくて……。母にどんな言葉をかければいいのでしょうか? また、私自身、親の態度についてどう考えればいいのか、悩んでいます。
玉井さんから回答:“良いストーリー”のなかで、心地よく生きて
「ご両親の関係を“ストーリー立て”してみましょう。その筋書きによって、お母さんの見え方が変わってきます」と玉井さん。「ストーリー立て」とは一体?
お母さんは「被害者」? 「すごい人」?
今回ご相談いただいたTさんとご両親には、2通りのストーリーが考えられそうです。
まず、「こんな勝手なお父さんを世話しなくてはいけないなんて、お母さんは被害者だ」というストーリーが1つ。あなたは今、お母さんを前者のストーリーの中の登場人物にしているようです。
お父さんに対しては「お母さんへの態度を改めてほしい」。そして、お母さんに対しては「お父さんに手をかけすぎないでほしい」。お母さんを守るために、両親を2人とも変えようとして、苦しんでいるように見えます。
その苦しみは、家族を思っているからこそ起こるもの。素晴らしいことですが、なかなか状況が変わらず、お悩みのようです。
さて、ここで別の見方を考えてみましょう。それは、「全力でお父さんを支えているお母さんはすごい」というストーリー。
物ごとを「良い/悪い」で割り切るのは、必ずしもいいことではないかもしれません。
ですが、お父さんの態度は変わらない、そして体調も急にはよくはならないのが現状。そんな中で「お母さんはすごい」という“良いストーリー”の中で過ごせたら、お母さんにとっても心地がいいのではないでしょうか。
ストーリーに沿って役割をこなすと負担が軽く
ストーリーができると、自分の役割が見えてきます。「全力でお父さんを支えるお母さん」というストーリーの中では、Tさんも「お母さんを信じ、支え、ねぎらう」というという役割が明確に。
その役割に応じて、「すごいね」「本当にがんばっているよね」と声をかけてみてください。
ねぎらうことでお母さんががんばれる、相談者さんもお母さんをねぎらう言葉のかけ方がうまくなる、お母さんはより気持ちよくがんばれる……という好循環が生まれるのが理想です。
今、お父さんとお母さんは、「世話をする」「世話をしてもらう」ことで、お互いに依存しているかもしれません。
さまざまな考え方がある現在。それぞれ精神的に自立し、対等の関係を築いている夫婦も多いですし、それはもちろん素晴らしいこと。
けれど、互いにどっぷりと依存し合っている夫婦も珍しくありません。そして、その状態が互いに心地よいのであれば、それは決して悪いことではないのです。
お母さんには、お父さんを支えられるだけの強さがあるはず。それを信じて「お母さんはがんばってるよね」「すごいよ」と声をかけてあげるのが、今のモヤモヤを軽くする近道ではないでしょうか。
今月のラク生きヒント:今できることをちゃんとやってみる
決して良い関係ではなくても、「断ち切るのが難しい関係」というのがあります。親子の関係は、その筆頭とも言うべきもの。
断ち切るのが難しいものとの関わりについて、心構えがあるとしたら、それは「大目に見る」ことだと思います。
うまくいかないこと、至らないことがあるのは当然。そんなときに親や自分自身を大目に見る、つまり寛大でいることができれば、関わるときの気持ちがやわらぎます。
親との関係に当てはめて考えてみましょう。
「親も、その親の影響を受けたんだろうな」
「私も、親の影響はあるんだろうな」
「でも成長した今、私は、自分のことは自分でしっかり取り組めている」
そんなスタンスで、過去のことや親、自分自身のことを大目に見られるかどうかが大事です。
相手の存在や関わりにとらわれず、今の自分自身に責任を持つこと。そして「今できることをちゃんとやる」ということが大切なのです。
雑誌の「ラク生き相談室」もチェック!
雑誌『からだにいいこと』では、毎号、玉井さんが別のお悩みにも答えています。人生をもっとラクに生きるためのヒントを知りたい方は、ぜひ、ご覧ください。
取材・文/馬渕綾子 イラスト/ARI
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