“明日は雨”予報の日は、頭痛・イライラ・うつうつ…「天気痛」を知ってますか?|からだにいい天気
天気が下り坂になると、体調が悪くなるような…そう感じている人は、特に女性に多いとか。それは「天気痛」や「気象病」と呼ばれるれっきとした症状。 月刊からだにいいことで好評連載中の気象予報士・岡田みはるさんと、「天気痛」の研究者・舟久保恵美さんが、天気痛の症状や簡単な対策について語りました。
目次
雨が降る前に頭痛がするのは 「気のせい」ではありません
【岡田】
近年、天気変化による体調不良「天気痛(気象病)」が注目されています。
ある気象会社の調査によれば、気圧が大きく下がるときに片頭痛やめまい、気分の落ち込みなどを感じる人の割合が3人に2人と急増するそうです。
私は低気圧が接近して気圧が下がるときにだるくなるタイプ。
梅雨シーズンや、低気圧の急速な発達がたびたび起きる季節の変わり目は、朝起きるのがつらいこともあります。
Keyword 「気圧」とは?
空気にも重さがあります。気圧とは、空気の重さによってかかる圧力のこと。例えば山に登ったときには、低地にいるときよりも人の上に乗る空気が少なくなります。つまり、低地よりも山の上の方が気圧が低いことに。
【舟久保】
私は頭痛持ちなんです。また、私の母は雨の前に頭が痛くなります。
頭痛がするとご近所に「あと1時間で雨が降るわよ」と、洗濯物を家の中に取りこむように知らせてまわる。すると本当に雨が降るんです。
でもかつては病院に行っても気のせいだと言われてしまいました。
【岡田】
少し前まで、本当にそういう状況でしたね。私はそういう方のために「気圧予報」を作りたいと思ったんです。
痛みが出るもっと前に、気圧の下降が始まるタイミングを天気予報でお知らせできたら心構えや対策がとれるはずだと。
それに、気圧予報があれば、自分の体調不良が気圧とどのように関係しているのか、自力で調べられるようになります。
【舟久保】
岡田さんが開発した、気圧予報で体調管理をするアプリ「頭痛ーる」が発表されたときには、私の研究室でも話題になりました。まさに天気痛のための予報です。
症状は頭痛だけじゃない 今話題の「天気痛」って?
【舟久保】
天気痛の症状は多様で、片頭痛に加えて腰痛、ひざや古傷の痛み、岡田さんのだるさも含まれます。
私は研究で、耳の奥にある「内耳」に気圧変化を感じるセンサーがあり、気圧によって自律神経の働きが左右されることをつきとめました。このメカニズムに合致する天気痛の症状はたくさんあります。
【岡田】
数ある天気痛の症状の中には、生活への支障が比較的少ないものから、非常に重いものまでありますよね。レディー・ガガさんが2017年に罹患を公表した線維筋痛症や、他に慢性疲労症候群(筋痛性脊髄炎)という難病も、天気変化の影響の大きい病です。
【舟久保】
そうですね。交通事故の後遺症があるなど、体に不調がある方は天気痛になりやすい傾向があります。「天気痛」は誰の身にも起こりうるごく身近なものです。
天気予報で体調管理を。 市販薬が効く場合も
【岡田】
私は気圧が下がる直前は、早めに布団に入って睡眠不足にならないようにする、アルコールを控えめにするなどの対策をとっています。
【舟久保】
私もです(笑)。私は週間天気予報を見て、体への負担が軽くなるようにスケジュールを変えることもあります。
そして、もしお出かけの際に急な「天気痛」に襲われたら、市販の乗り物酔いの薬で対処できることがあります。抗ヒスタミン剤が入っているものがいいですよ。
内耳は平衡感覚や重力の情報を脳に運んでいます。天気痛の症状は吐き気、めまい、頭痛など、乗り物酔いの症状に似ているんです。お出かけ先の薬局でも買えますし、困ったときは重宝します。
【岡田】
気圧変化が大きい飛行機や新幹線に乗って不調になったときにも役に立ちそうですね。
【舟久保】
ただ、症状の軽視は禁物。特に頭痛は病気です。頭痛がしたら、頭痛外来へ行ってくださいね。
天気痛に備えるために ー 週間天気予報のチェックのしかた
気圧の変化に注意して!
高気圧にすっぽりと覆われると、空は晴れて風も穏やかになります。気分も晴れ晴れ、体調の良くなる方も多い。お洗濯日和、お出かけ日和……気持ちのいい青空の下、さあ何をしましょう?
ただし、同じ晴れは晴れでも、“不調に注意したい晴れ” の日があります。
晴れているのに頭が痛い……そんな経験はありませんか?
週間天気予報で晴れマークが連続し、その後に曇りや雨マークがあるとします。
この、曇りや雨の “前日の晴れマーク” には要注意です!
上の例では、日曜日から水曜日までが晴れ、木曜日から曇りや雨になっています。こういうとき、気圧は前日の水曜日には下がり始めることが多いのです。
これは特に春と秋に多い週間天気のパターンですが、低気圧が接近すると、日差しのあるうちから気圧が下がるのは、どの季節にも通じます。
天気が崩れると体調も悪くなる、と自覚している人は雨マークにばかり目が行きがち。
でも、気圧が下がるのは雨が降るよりもっと前。
低気圧が接近すると、晴れているうちから気圧は下がり始めるのです。
気圧に敏感な方はぜひ、予定を詰め込まずに余裕を持って、そんな晴れの日を過ごしてくださいね。
撮影/大槻夏路 イラスト/中村加代子
(からだにいいこと2018年6月号より)
[ 監修者 ]