家飲み、運動不足でリスクが増加。「脂肪肝」になりやすい人って?
コロナ禍で家飲み需要が高まり、飲酒量が増えた人も多いはず。そこで注意すべきなのが 、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝。健康診断の目安や最新の脂肪肝ドッグをご紹介します。
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家飲みで飲酒量が増えた!? 高まる「脂肪肝」のリスク
新型コロナによる影響で明らかに外食が減りましたよね。そんな中、家飲みの機会が増えて、ついついお酒を飲み過ぎてしまっている人も多いのではないでしょうか?
飲酒量が増えると気になるのが、肝臓の健康。「昔よりも翌日にお酒が残るようになった」という人は特に気になりますよね。肝臓は、病気になっても症状が出にくく静かに進行することから“沈黙の臓器”とも言われています。今回は、お酒が好きな人はもちろん、飲まない人も注意したい「脂肪肝」について、新百合ヶ丘総合病院の医師、袴田拓さんにお聞きしました。
「脂肪肝とは、フォアグラのように肝臓に脂肪がたまった状態です。特に、お酒の飲み過ぎによってリスクが高まります。脂肪肝になると、肝臓が固くなる線維化や肝炎、肝硬変、さらには肝がんへ進行することもあります 」(袴田さん)
肝硬変・肝がんになると、大好きなお酒が飲めなくなるなど、今までと同じ食事や生活が送れなくなってしまいます。いつまでもお酒を楽しむためにも、日ごろから飲み過ぎに注意して肝臓をいたわってあげることが大切です。
女性ALT>20なら軽度の脂肪肝
「自分が脂肪肝かどうかは、健康診断で行う血液検査の結果をチェックしてみましょう。血液検査で肝機能を表す数値は「AST」「ALT」「γ-GTR」の 3種類があります。これらの数値は医療機関によって多少異なりますが、それぞれの基準範囲は以下の通りです 」(袴田さん)
しかし、基準範囲だからといって、安心してはいけません。
「肝機能を表す3種の数値のなかでも、注目してほしいのが『ALT』です。女性の場合、ALTが20以上、男性の場合はALTが30以上の数値ならば、軽度の脂肪肝かもしれません」 (袴田さん)
気になる人は、今すぐ健康診断の結果を見てみましょう。
お酒を飲まない人でも「アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に注意
「お酒を飲まなければ、肝臓は健康というわけではありません。脂肪肝にはアルコール性と非アルコール性があり、お酒を飲まない人でも脂肪肝に注意が必要です 」(袴田さん)
実際に、まったくお酒が飲めない50代女性の肝臓を検査したところ、肝臓の硬さや機能に問題はないものの、肝脂肪率が14%で中程度の脂肪肝ということが分かりました。
「近年、お酒を飲まなくても起こる『非アルコール性脂肪肝疾患』や、肝炎や肝硬変に進行する『非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)』が注目されています。生活習慣が原因となるメタボリックシンドロームが増えるとともに、非アルコール性の脂肪肝になる人が世界中で増加傾向にあります。日本では、『非アルコール性脂肪肝疾患』が人口の9~30%、『非アルコール性脂肪肝炎』が3~5%だと推定されています 」(袴田さん)
特に、「非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) 」になると、肝炎や線維化が起こりやすくなり、最終的に肝硬変や肝がんに進行するリスクも。お酒を飲まない人でも 日頃の運動量や食生活を振り返ってみましょう。
肝臓の硬さが分かる最先端「脂肪肝ドック」とは?
「自分の肝臓が心配」という人の中で、以下の項目にひとつでも当てはまる人は、医療機関で詳しく肝臓を調べてもらった方が良いでしょう。
□エコーで脂肪肝が指摘された
□血液検査で肝機能異常を指摘された
□肥満気味だ
□アルコールを毎日飲む
ひとつでも当てはまるものがあったら、詳しい検査ができる「脂肪肝ドック」をおすすめします。
「『脂肪肝ドック』とは、30 分程度で肝臓の脂肪量と硬さが分かる最新の検査 です。これまでは、血液 検査やエコー検査よりも詳しく調べる場合は、脇腹から肝臓に針を刺して行っていました。 『脂肪肝ドック』は 肝臓を振動させて、MRI(核磁気共鳴画像法)で撮影するため、体を傷つけずに肝臓の状態を調べられるのです 」(袴田さん)
飲み過ぎは脳の萎縮にも影響
お酒は脂肪肝だけでなく、脳を萎縮させるリスクも高めます 。
「気になる人は、『脂肪肝ドック』と一緒に『脳ドック』を受けることをおすすめします。脳の萎縮はもちろん、通常の人間ドックでは分からない脳動脈瘤や脳梗塞などの病気 も検査できます」(袴田さん)
なかなか外食ができない中、数少ない楽しみとなっている家飲み。健康な体でお酒を 長く楽しむために、自分の肝臓を気にかけながら生活を。脂肪肝になると、将来肝がんになる可能性もあります。“沈黙の臓器”でもある 肝臓は、症状が出る前に定期的に検査を受けてくださいね!
文/廣瀬茉理