「免疫力アップ」に必要な栄養と摂り方。今こそ食事で習慣づけを!
栄養に関する研究で世界をリードするDSM社の“ビタミン博士”こと乾泰地さんが、不調を栄養素で解決する方法を教えてくれるこの連載。第9回は「免疫力アップ」です。新型コロナウイルスで、続いた“巣ごもり”生活。外出ができる生活が戻りつつありますが、また気は抜けません。自分の健康を自分で守ることがより重要となった今、「免疫力アップ」のために大切な栄養素をご紹介します。
目次
変化した食生活で、栄養素も不足
外出自粛の空気もゆるやかになりつつありますが、新型コロナウイルス感染症の第2波の危険も叫ばれています。まだまだ油断のできない感染症を予防するためにも、食事からの栄養で自らの免疫力を上げておくことが重要です。
“巣ごもり”生活が続き、栄養のバランスや生活リズムが乱れてしまった方も多いことでしょう。食生活や生活リズムの乱れにより、体の中では免疫に必要な栄養素が不足していることも考えられます。例えば、食生活が乱れることで、免疫力を上げる「ビタミンC」など免疫にかかわる栄養素が減ってしまうという調査結果も。今こそ、口に入る食べ物からの力で、免疫を上げておかなくてはいけません。
人間に備わった「免疫」とは?
まずは、「免疫」について簡単に説明しましょう。免疫とは、分かりやすく言うと病原菌やウイルスから守る、体の仕組みのこと。免疫は、次の3タイプに分かれています。
一つ目は、体内に病原菌などが侵入しないように、壁をがっちり固める物理的な防御です。皮膚もそうですし、目や口、胃腸などは粘膜が覆ってガードしています。
二つ目は、体内に入ってきた得体の知れないものをやっつける「自然免疫」。三つ目は、以前出会ったことのある病原体にすばやく反応する「獲得免疫」で、ワクチン接種もこれにあたります。どれも健康な体には欠かせない仕組みです。
これらの免疫の力を高めるためには、どんな栄養素が必要なのでしょうか?
免疫力アップのための栄養素
免疫力アップに特に深く関わるのは「ビタミンD」「ビタミンC」「亜鉛」「オメガ3脂肪酸」「ビタミンA」「タンパク質」の6つ。これらの栄養素の特徴と、おすすめの食べ物をご紹介します。免疫には他にも多くの栄養素が関わり、また、どれか一つを摂れば効果を発揮するものではありません。まずは代表的な6つの栄養素の効果をよく知り、バランスよく摂取しましょう。
色んな病気に関係する「ビタミンD」
免疫力アップ! と言われて皆さんが最初に思い浮かべているのは、恐らく自然免疫や獲得免疫だと思います。どちらも免疫細胞が重要な働きをしており、その免疫細胞を作り出すプロセスに、ビタミンDが深く関わっています。
そのため多くの研究が行われており、ビタミンDの栄養状態が結核や風邪の症状に関係しているという研究結果もあるのです。さらにビタミンDは筋肉の維持に関わっているので、運動不足になりがちな生活に欠かせない栄養素。ビタミンDは太陽を浴びると体内で生成されますが、外出を控える生活が今後も続くと十分な量が生成されない可能性もあります。
●「ビタミンD」を多く含む食べ物
しらす
鮭
サバ
しいたけ
まいたけ
キクラゲ など
免疫作用による体への攻撃を防ぐ「ビタミンC」
ビタミンCは、白血球を活性化させるなどの働きがあり、こちらも自然免疫に欠かせない栄養素です。そして意外な機能が、「免疫から自分を守る」こと。実は、免疫細胞は病原体を殺すときに活性酸素を出していて、増えすぎると体を攻撃することも…。そんなときに「ビタミンC」を細胞内に蓄えておけば、活性酸素に自分の体がダメージを受けることを防ぐことができます。
また、ストレスの多い生活を送ると活性酸素が発生しやすくなり、体内のビタミンCが減少。病気にかかったときには、細胞内のビタミンC濃度がさらに下がります。そのためにも、ビタミンCを常に多めに摂って蓄えておきましょう。
●「ビタミンC」を多く含む食べ物
ピーマン
キャベツ など
ビタミンCがたっぷりで、日持ちする食材をピックアップしました。なかでもピーマンは豊富に含まれており、抗菌作用もあるのでおすすめです。また、長期間保管できる冷凍ほうれん草にも、多く含まれています。
免疫細胞を元気にする「亜鉛」
亜鉛も、ビタミンCと同じように、免疫細胞を活発にします。また、活性酸素が体を傷つけるのを防いでくれます。
●「亜鉛」を多く含む食べ物
牡蠣などの貝類
病原菌と戦う炎症作用をコントロール「オメガ3脂肪酸」
ビタミンCや亜鉛と別の角度から、過剰な免疫反応から自分を守るのがオメガ3脂肪酸。感染症にかかったときに熱が出るのは、炎症作用で病原菌から体を守るためです。その炎症作用が上手くコントロールできないと、病原体への攻撃で自分自身の体も傷つけられてしまいます。
それを防いでくれるのが「オメガ3脂肪酸」。オメガ3脂肪酸は、生活習慣病を予防するとも言われている良質な脂肪酸で、魚などに多く含まれています。
●「オメガ3脂肪酸」を多く含む食べ物
アジ・サバ・いわしなどの青魚
イカ
タコ
鮎 など
病原体を鉄壁ガード「ビタミンA」
体内に病原菌などが侵入しないようにする物理的防御も、栄養でケアすることができます。中でもビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を守り、病原体の侵入を防ぐ働きがあります。
●「ビタミンA」を多く含む食べ物
レバー
にんじん(色の濃い野菜) など
病気と戦う戦力になる「タンパク質」
最後に、タンパク質です。自然免疫や獲得免疫では、病原体やウイルスと戦う免疫細胞をたくさん作る必要があります。
しかし、細胞の原料とも言えるタンパク質が不足すると、せっかくビタミンなどが免疫を作ろうとしても上手くいかず、病原体と戦うパワーが落ちてしまいます。
なお、タンパク質の働きには、今回ご紹介していないビタミンB群をはじめ多くの栄養が関与していますので、やはり満遍なく栄養を摂取することが大事ですね。
●「タンパク質」を多く含む食べ物
肉類(特に、レバー)
魚類
大豆食品
乳製品 など
ストック食材でも栄養は摂れる
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新しい生活様式として人混みを避けるため、食品をなるべくまとめ買いしている人も多いはず。そんなときに便利なのが冷凍野菜です。
実は、生の野菜と比べても、代表的な栄養素はほぼそのまま。日持ちする野菜とあわせて、冷凍野菜も活用すると良いでしょう。
また同様に、長期保存可能な魚の缶詰めもおすすめ。生魚とほぼ変わらず、ビタミンDやオメガ3脂肪酸を摂ることができるので、ストック食材を上手に活用して、免疫力を高めましょう。
免疫力アップには朝ごはんが大切
最後に、三食の中でも必ず食べてほしいのが朝ごはんです。同じ量のタンパク質を摂っていても、朝ごはんで摂っている場合の方が、身体機能が低下する確率が低いというデータもあります。朝ごはんは、1日の活動のためのスイッチにもなります。
以前の日常を少しずつ取り戻しつつある状況ですが、感染症のリスクはまだまだ消えてはいません。ウイルスに負けないために、日頃から必要な栄養素を摂取し、免疫力を上げておきましょう。もちろん、それを習慣化するためには食事を楽しみながらいただくことも大切です。
イラスト/斉藤明子
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