仕事や家事のつらい疲労に「ビタミンB6・B12」がいい理由
栄養学の研究者・乾泰地さんが、不調を栄養素で解決する方法を教えてくれるこの連載。今月のテーマは「疲労」です。仕事や家事の疲労には「ビタミンB6・B12」が効果的。摂取のコツをご紹介します。
「疲労にお酢」は違う!? 効くのはビタミンB群
「疲れたときに食べるもの」で多いのが、お酢やレモンなどの酸っぱいもの。実は酸っぱいものは、激しい運動をしない女性にとっては、それほど疲労回復効果は高くないのです。酸っぱいものがいいのは、ジムなどでハードな運動をする人。運動で一時的に体内の乳酸濃度が高くなったときに酸っぱいものを摂ると、体が酸性になり乳酸の分解が促進されます。
家事や仕事による女性の疲労感には、酸っぱいものよりも、「ビタミンB群」が効果的。60兆個以上ある細胞は、つねに代謝をくりかえしています。食べたたんぱく質や脂質などが、細胞の中で代謝されるとき、エネルギーを生みだす化合物に変換されます。その変換をサポートするのが「ビタミンB群」なのです。
ビタミンB6・B12で、疲れが吹き飛ぶ
ビタミンB群の中でも、日本のお疲れ女子に大切なのが「ビタミンB6」と「ビタミンB12」。脂質やたんぱく質の代謝を助けるほか、どちらも血液中の「赤血球」をつくる働きにかかわります。赤血球は、酸素を体のすみずみまで届けるため、少なくなるとだるさや疲労感につながります。赤血球と酸素というと、鉄を思い浮かべます。日本人女性は鉄分不足からくる貧血が多いのですが、ビタミンB群の大切さは意外と知られていません。
ビタミンB6・B12が十分に足りていれば、スムーズに体内を酸素が巡り、効率的に疲れを解消してくれます。まさに、ビタミンB6・B12こそ、お疲れ女子の救世主。体の細胞レベルから復活させてくれる“お助けビタミン”といえます。
豚肉・バナナ・鮭……「疲れとり食材」
では、ビタミンB6・B12を効率よく摂るには、どんな食べ物を食べたらいいのでしょうか。成分別にご紹介します。
●ビタミンB6
バナナ
にんにく
パセリ
玄米
マグロ
納豆 など
●ビタミンB12
豚肉(特に豚レバー)
牛レバー
鮭
いわし
貝類
すじこ
海藻類 など
「ビタミンB群」は、生食がベスト
ビタミンB6・B12などのビタミンB群は、「水溶性ビタミン」といい、水に溶けやすい特徴があります。加熱にも弱いため、疲労回復の効果を高めるには、煮たり焼いたりするよりも、生のまま食べるのがおすすめです。ただし、豚肉・レバーなどは、十分な加熱が必要ですので、食品に応じてよく調理して食べてください。特に夏場の食品管理には気をつけましょう。
サプリを飲むなら、食後のほうが吸収力UP
疲れた……と思ったら、ご紹介したような食材を積極的に摂ってみてください。食べ物から体を回復にさせるのはもちろん大切ですが、ビタミンB群は、食事摂取基準の推奨量に多くの人が足りていないといわれています。そんな不足を補いたいときはサプリメントにたよるのもいいでしょう。
吸収力をアップさせるには、空腹時よりも食後に摂ること。ビタミンB群の中でもB12は、唾液の中にあるたんぱく質と結合しないと吸収されないという特徴があります。結合するひとつの条件として、胃の中が酸性になり胃酸が出ている状態がいいとされます。よって空きっ腹で飲んでも小腸でうまく吸収されません。B群のサプリを摂るときは、お腹に食べ物を入れてから飲みましょう。
体の疲れは、そのままにしておくとどんどん積み重なり、病気や慢性的な不調の原因になります。疲れは小さいうちに手を打つことが大切。日ごろからビタミンB6・B12を摂っておけば、疲れをとるだけでなく、疲れにくい体になれますよ。
イラスト/斉藤明子
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