敏感で傷つきやすい…。HSPの特性やつらいと思ったときの対処法とは?
人よりも敏感で、生きつらさを感じることはありませんか? それは「HSP」という気質を持っているからかもしれません。これまでたくさんのHSPを診てきた精神科医が、HSPの特性やつらさを解消する方法を解説します。
目次
そもそも「HSP」とは?
他人の気持ちに共感しすぎて疲れる、些細なことが気になって仕方がない…。自分は“敏感”すぎると感じている人は「HSP」という気質を持っているかもしれません。生きづらさを解消する方法を、精神科医の長沼睦雄さんにお話を伺いました。
HSPとは、「Highly sensitive person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」
といい「感覚や刺激に対して神経が高ぶりやすい気質」のこと。
よく、HSPを病気だと思い込む人もいますが、そうではありません。HSPは、生まれ持った性質、つまり「気質」です。
HSPはそうではない人と比べて、受け取った刺激を伝える「感覚神経」や、体のあらゆる機能をコントロールする「自律神経」が敏感です。環境にある危険をすばやく察知して、周囲の人たちを守るための防衛本能に優れています。
しかし、その敏感さのために神経が人より高ぶりやすく疲れやすいので、生きづらいのが問題です。
これが、脳や心、体の不調、病気の原因になってしまうことがあります。
HSPの人の性質は?
HSPの人の性質は、大きく分けて4つあります。
次から紹介する性質が4つとも当てはまる場合は、HSPといえます。
1. 過剰に刺激を受けやすい
HSPの人は、そうではない人にとっては何でもないことでも、とても気になります。
例えば、ささいな音や何気ないにおい、ちょっとした人混みや騒音などにも敏感です。環境からたくさんの刺激を感じ取り、神経が疲れ果ててしまいます。
2. 共感力が高い
人の感情や感覚を自動的に読み取り、過剰に同調してしまいます。そのため、周りの人の気分や雰囲気に左右されやすいのです。一方で、人の気持ちに共感でき、相手の行動を先回りして、細かな気配りができる人です。
3. 物事を深く丁寧に考える
物事を深くとらえ、さまざまな可能性やイメージを思い浮かべてしまうので、会話や作業に時間がかかってしまいがちです。
一方で、物事をじっくり考えて行動することができるので、仕事ではクオリティの高いものを作ることができます。
4. 些細な刺激を察知する
HSPではない人には気にならないし気がつくことができない、音や色、においや味、触感や食感、電磁気や人の気配などの変化や違いを感じることができます。
そのため、仕事では周囲の小さなミスや欠陥に気がつき、事前に修正することができるので、事故や損失を防ぐことができます。
あなたはHSP? 敏感度チェックリスト
4つの基本的な性質がすべて当てはまった人は、次のチェックリストに自分がどれくらい当てはまるか確認してみてください。まずは、セルフチェックで自分のHSPの性質や程度を知ることが大切です。
<HSPセルフチェックリスト/◎=かなり当てはまる、〇=当てはまる、△=少し当てはまる、×=当てはまらない、?=わからない>
■得意な面
( )素直で純粋で人を信じやすく優しい
( )人を守りたいという気持ちが強い
( )使命感があり向上心が強い
( )真面目で責任感が強い
( )ネガティブな感情への共感性が強い
( )相手の気持ちを読むのが得意である
( )正義感が強く礼儀正しい
■苦手な面
( )いつも相手に合わせて「いい子」でいようとしてしまう
( )色や音やにおいなど、ちょっとした刺激が気になる
( )夢や空想がリアルで現実と混同してしまう
( )ひとりになる時間や空間があると助かる
( )相手のペースに合わせることができない
( )相手のことを考えすぎて嫌だと言えない
( )集団の中で無口になってひとりになる
( )感情、言葉、行動を表に出せず抑えてしまう
( )監視や評価、時間制限などが苦手
( )周囲の人の気分や感情に左右されてしまう
( )とても神経が疲れやすい
( )一度にたくさんのことができない
■周囲の人たちに影響されやすい
( )自分には関係のない問題に巻き込まれたりする
( )予期せぬほど多くの人に嫌な思いをさせられたりする
( )必要以上に口に出してしまったりする
( )人間関係の泥沼に引きずり込まれたりする
( )深く付き合うはめになったりする
※エレイン・N・アーロン著『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』より作成。
HSPの長所は?
ここまで読んで、「HSPはさまざまなことに敏感で、つらいことが多い…」と思う人もいるのでは?
しかし、敏感なことは、つらいことばかりではありません。生きるうえで強みにもなります。次から、HSPの長所を紹介します。
【HSPの人の長所】
・他人が見過ごすような小さな変化や異常に気がつくことができる
・相手の心を敏感に察知し、共感性が高く、細かな気配りができる
・鋭い感受性やひらめきがあり、想像性や創造性に富んでいる
・真面目で責任感が強く、使命感や向上心が強い
これらの長所は、チームで仕事をするときや、人づき合いするときに活かされます。
HSPで生きづらいと思ったときの対処法
敏感すぎて生きつらさを感じたときに、少しでも不安や苦しさを和らげる方法を紹介します。
自分と他者に境界線を引く
人に何か否定的なことを言われて、その言葉が胸に刺さったとしても、そのままにしておいてはいけません。心が痛いほどつらいときは、相手の毒矢をいち早く抜いて手当てしなければいけません。放置したなら、相手の毒が体に回り動けなくなってしまいます。
解毒するには、傷口に肯定的な言葉や魔法の言葉をたくさん刷り込むことです。「ありがとう」「ごめんね」「許します」「愛しています」「つらいね」「大丈夫」…などなど。
世の中の出来事に良し悪しはありません。立場が変われば意味も価値観も変わります。
相手に押し付けられた価値観はすぐに手放して、自分の思考や感覚を取り戻してください。
自分も相手も否定せず、「自分は自分、相手は相手」と境界線を引いて、自分を守りましょう。
「瞑想」で身体の声に気づく
身体感覚に意識を向けて観察しながら時間を過ごす「マインドフルネス瞑想」は、身体への気づきを促し、自分自身を受け入れる助けになります。
静かな場所で、身体の部分を意識し続けるだけでOK。初めは、さまざまな雑念が頭に浮かんで集中を邪魔しますが、そうした雑念が沸いてもそちらには意識を向けずに続けてみましょう。
マインドフルネスのやり方は?ヨガの本場・インドで学んだ瞑想法|からだにいいことWeb
自分の強みを伸ばす
自分の本音や弱みを否定して消すのではなく、それを受け入れながら強みを見出し伸ばすことが重要です。
例えば、人づき合いに疲れたときは、断ってもOK。
代わりに、自然や動物、本、音楽、食べ物など、自分ひとりで過ごせて、楽しいと思えることを密かにやってみること。疲れた心や身体が癒されて、人に対する嫌な気持ちも変わってくるはずです。
他人との境界を作る
敏感気質の人は自分と他人とを区別する境界線(バリア)が弱く、他人の感情や感覚に無意識に影響されやすいのが特徴。
ふだんから「どうしたら自分をワクワクさせられるか」を考えたり、自分の言葉や行動に「これは心地がいいのか不快なのか」と、まず自分の身体に問いかけてみて。
世間や他人の評価を気にするのではなく、自分と他人を切り離して自分軸で感じてみるクセをつけましょう。
嫌なことや人から距離を置く
HSPの人は、嫌な人がいたり嫌なことがあっても、それを避けたり嫌だと言えないという性質を持っています。
心が緊張や恐怖で震えたり固まったりするときは、そこから離れても逃れても構いません。
・会うと体調が悪くなる人や場所、物や事
・怒りや悲しみなど負の感情を持っている人
・うつや不安など心が弱っている人
などからは、誘いを断るなどしてなるべく距離を置きましょう。
今関わっている人が、安心で安全な人かを判断するには…
・話に耳を傾けてもらえるか
・嫌なことは嫌と言えるか
・感じ方や考え方を強要されないか
・二人だけの世界に束縛されないか
・人格を否定されたり怒られたりしないか
などを考えてみましょう。
どうしても逃れられない場合は、自分自身の体調を整えてその場に臨みましょう。これらを習慣にすることで、心や体の免疫力が強くなり、心身が疲れにくくなります。
HSPの人は、自分らしさを抑圧したり否定したりして、相手に合わせて疲れている人が多い傾向があります。
まずは自分が他人とは違う性質を持っていることを自覚し、本音や弱さを抑圧しないようにしましょう。
生きづらさや苦痛を感じたら、他人よりも自分の心や体を癒すことを最優先に考えて。そうすれば、慢性疲労に陥ることを防げますよ。
▷あなたにおすすめの記事
繊細で共感性の高い気質を持っているHSPは、人間関係に気を使いすぎてとても疲れやすく、人嫌いになる傾向があります。HSPに詳しい精神科医が、その原因や心が疲れないための工夫、人づき合いのコツを解説します。
人付き合いが苦手、細かいことが気になって疲れる……それはHSPとも呼ばれる、“敏感気質”のせいかも? そんな自分の繊細すぎる気質とうまく付き合って、ゆったり楽に生きる方法を教えます!
感受性が強く敏感な気質を持った人を表す「HSP」。“繊細さん”とも言われるHSPのセルフチェックのほか、HSPの人が生活しやすくなる食事や生活の改善法をご紹介します。
[ 監修者 ]