あなたのタイプは?体の疲労を東洋医学で回復!|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「疲労回復」がテーマ。つらい疲れをすっきりさせるセルフケアを紹介します。
目次
東洋医学からみる3つの「疲労タイプ」とは?
今年も残りわずか。12月は1年の中で夜が最も長く、東洋医学でいう「陰陽」の「陰」の気が強い時期にあたります。「陰」の気が強まると体は冷えやすくなります。
そんな冬の体の変化に加え、1年の終わりでバタバタして、疲労が溜まっている人も多いのではないでしょうか。
そもそも私たちが疲労を感じるのは、体に必要なものが“不足”しているから。東洋医学でいう「気=エネルギー」や「血=血液」が足りていない状態と考えられます。
また“不足”だけでなく、ストレスや老廃物がうまく出せず、体に“滞り”がたまることも、疲労の大きな原因に。疲労のタイプは大きく分けて次の3つに分けられます。
(1) エネルギーや血液が足りていない「気血不足タイプ」
(2) 老廃物やストレスが溜まっている「気滞血瘀(きたいけつお)タイプ」
(3) 慢性的な疲労感が抜けない「腎虚(じんきょ)タイプ」
次から紹介するチェックリストで、どれに当てはまるか確認して、タイプにあったセルフケアを試してみてください。
あなたはどれ? 3つの「疲労タイプ」チェック!
あなたの疲労タイプはどれ? 3つのタイプをくわしく解説します! 各7つのチェック項目のうち、一番多く当てはまったタイプがあなたの疲労タイプです。不足とめぐりが悪いなど、2つのタイプが重なっている人もいます。
(1) エネルギーや血液が足りていない「気血不足タイプ」
気血不足タイプは、体を元気にするための“材料”が足りていない状態。気=エネルギー、血=血液が不足していて、それがぐったりとした疲労感となって現れます。
□疲れやすい
□息切れする
□倦怠感がある
□めまいがする
□不眠だ
□動機がする
□不安感がある
(2) 老廃物やストレスが溜まっている「気滞血瘀(きたいけつお)タイプ」
気や血のめぐりが悪くなり、心にはストレス、体には老廃物が溜まり、ぐったりしているのが「気滞(きたい)・血瘀(けつお)タイプ」。発散や排出ができずに体の中に溜め込み、それがだるい、重いといった疲労感や、様々な不調につながっています。
□頭痛が起きやすい
□慢性的な肩こりがある
□生理痛がひどい
□顔色がくすんでいる
□イライラしやすい
□生理前に不調を感じやすい
□ゲップやガスが多い
(3) 慢性的な疲労感が抜けない「腎虚(じんきょ)タイプ」
東洋医学で生命エネルギーを司る「腎(じん)」。体の根本的な働きを担い、老化現象にも関わります。なかなか疲れが取れない、疲労が慢性的な人は、「腎」が弱った「腎虚タイプ」かも。3つの中で一番しぶとい疲労といえます。
□足腰が弱い、だるい、痛い
□疲れやすい
□トイレが近い
□冷える、のぼせる
□周りの人より老けて見られる
□白髪や抜け毛が多い
□物忘れが増えた
疲労タイプ別「東洋医学的セルフケア」
みなさんはどのタイプに当てはまりましたか? 自分のタイプにあった対策をするのが疲労回復への近道です。ここからはタイプ別のセルフケアを紹介します。「食事」「生活習慣」「ツボ」で、疲れない体を手に入れましょう!
(1)気血不足タイプの疲労回復法
【食事】黄色と赤い食べ物を摂り入れる
気血不足タイプは、食べ物から「気」と「血」を補いましょう。
「気」を補うのは、黄色い食べ物と、素材そのものの自然な甘みを感じられる食べ物。「気」は胃腸で作られ、いずれも胃腸を元気にする力があります。
黄色い食べ物…さつまいも、かぼちゃ、バナナ など
自然な甘みを感じる食べ物…米、大豆製品、リンゴ など
「血」を補うのは、赤い食べ物。赤身肉は血も気も、どちらも補います。赤い食べ物以外に、ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜もおすすめ。
赤い食べ物…なつめ、クコの実、ぶどう、赤身肉、ブルーベリー、小豆、鮭
緑黄色野菜…ほうれん草、小松菜 など
【生活習慣】休んで「気血」を充電する
不足している「気」と「血」を増やすためには休息が必要です。気血不足タイプの人が、疲れをすっきりさせたいからといって岩盤浴やサウナに行ったり、長風呂をしたりするのは逆効果。ますます消耗して、疲れが倍増します。
まずはその日のうちに寝ることを心がけ、睡眠をしっかりとってください。「気血」は食べ物を材料にして睡眠中に作られます。疲れた…、もうヘトヘト…。そんなときは食事よりも睡眠を優先してください。
【疲労回復のツボ】気を補う「気海(きかい)」
ツボの場所:おへそから指2本分下。
押し方:人差し指と中指をそろえてツボにあて、ゆっくり押してゆるめるのを繰り返しましょう。お灸やカイロ、腹巻で温めるのも効果的です。
【疲労回復のツボ】血を補う「血海(けっかい)」
ツボの場所:ひざのお皿の上、内側の角から指3本分上がったところ。
押し方:太ももに対して、上から垂直にイタ気持ちいい強さでグーっと押します。
(2)気滞血瘀(きたいけつお)タイプの疲労回復法
【食事】柑橘系と血液サラサラ食材を
東洋医学で、気が滞った「気滞(きたい)」や、血が滞った「瘀血(おけつ)」の状態をいいます。
気の滞りを流すには、柑橘系や香草類、ハーブなどの香りのある食材が効果的。瘀血には、血液サラサラ効果のある玉ねぎや青魚、ニンニクやショウガなどの薬味、温め作用のある食材を積極的に摂り、体に滞りをスムーズにしましょう。
柑橘系食材…パクチー、三つ葉、ミントなどのハーブ(ミントガムもOK)、柑橘系フルーツ など
血液サラサラ食材…らっきょう、生姜、玉ねぎ、黒きくらげ、カニ、青魚 など
温め作用のある食材…ニラ、生姜、にんにく、シナモン、ココア、紅茶、ほうじ茶 など
【生活習慣】ストレスを発散できる自分時間を持つ
「気血不足タイプ」とは反対に、「気滞血瘀タイプ」は体を動かしたほうが疲労回復につながります。なんでもいいので心の滞り=ストレスを発散できる自分だけの時間を持ちましょう。
また、運動で適度に体を動かすと、血液の流れが良くなり滞りが解消します。ストレス解消にもなるのでおすすめです。家でダラダラ過ごすより、外に出て散歩したり、趣味を楽しんだりしてください。
【疲労回復のツボ】気滞(きたい)を解消する「太衝(たいしょう)」
ツボの場所:足の甲。親指と人差し指の骨を足首方向にたどっていったくぼみ。
押し方:太衝を親指か人差し指で真上から押したら、そのまま足首の方へスライドさせるイメージで刺激。痛みが出やすい場所なので、力いっぱい押さず、イタ気持ちいい強さで押しましょう。
【疲労回復のツボ】瘀血(おけつ)を解消する「三陰交(さんいんこう)」
ツボの場所:内くるぶしの頂点から指幅4本分上がったところの骨と筋肉の境目。
押し方:気持ちいい強さでゆっくり息を吐きながら静かに押して、息を吸いながら離します。お灸をするのもおすすめです。※三陰交は妊娠中は押さないように。
(3)腎虚タイプの疲労回復法
【食事】黒い食べ物を積極的に
腎虚タイプのしぶとい疲労には、生命エネルギーをアップさせる黒い食べ物を。
「鹹味(かんみ)」といわれる塩辛い食べ物も腎を補います。塩辛いといってもただしょっぱいものではなく、ミネラル豊富な海の食べ物がおすすめです。
他にも、生命の気が詰まったタネ類、体を温める作用のある食べ物も摂り入れましょう。
黒い食べ物…黒豆、きくらげ、黒ゴマ、海藻、海苔、きのこ など
鹹味(かんみ)…エビ、牡蠣、なまこ、すっぽん など
タネ類…くるみ、ピーナッツ、松の実 など
体を温める食材…鮭、エビ、ニンニク、ニラ、栗 など
【生活習慣】生活リズムを整えて体を冷やさない
たくさん寝ても疲れがとれないのが腎虚タイプの特徴です。根本から疲れを解消するためには、規則正しい生活リズムを取り戻すこと。
早寝で十分な睡眠時間とる、3食しっかり食べるといった人間本来の健康的な生活に立ち戻りましょう。
また、腎は冷えに弱いので、体を冷やさないことも大切です。腎虚タイプは疲労感が抜けるまで時間がかかるので、長い目でセルフケアを続けてくださいね。
【疲労回復のツボ】腎の働きを高める「太谿(たいけい)」
ツボの場所:内側のくるぶしとアキレス腱の間。脈を打っているところ。
押し方:親指の腹で、気持ちいいと感じる程度の力で押しましょう。「5秒押してゆっくり離す」を繰り返します。また、くるぶしまである靴下をはいて、「太谿」を冷やさないように。
全タイプ共通のセルフケア:背中に日光浴をする
疲れない体をキープするためには、冬の日光浴がおすすめです。「人参湯(にんじんとう)」という元気を補う漢方薬があるのですが、古い中国の本に、「冬の日光浴は人参湯と一緒」と言われるほど。
日光を浴びるときは、お腹側よりも背中に。人間はもともと四つ足だったことから、お腹側は「陰」、背中側が「陽」とされています。
また背中には「督脈(とくみゃく)」という体を温めるツボもあります。冬の日差しは背中に浴びて疲労を回復させましょう。
今月の養生ポイント:冬は予定にも気持ちにもゆとりを
毎年あわただしく過ぎ去る12月ですが、冬の養生からすると、気持ちにもスケジュールにもゆとりをもってほしい季節です。
東洋医学で冬の睡眠は、「早寝遅起き」がいいといわれ、いつもより早く寝て、気温が少し上がってきたころに遅めに起きると、睡眠時間もしっかり確保でき、体の負担になりません。
今年は、コロナの影響で帰省や旅行をしない人も多いのではないでしょうか。こんなときこそ、ゆっくり体と心を休めて、年末年始にメンテナンスしてあげてくださいね。
今年も1年、がんばった自分に「おつかれさま」と言ってあげましょう。
イラスト/植松しんこ
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