「価値観の違い」どうしたらいい?|玉井仁さん ラク生き相談室 出張版
雑誌『からだにいいこと』との連動企画である本連載。臨床心理士の玉井仁さんが、読者のみなさんのお悩みを通し、「ラク」に生きるための考え方・コツなどをお伝えします。今回のテーマは「価値観の違い」です。
目次
今回のお悩み:息子の彼女のちょっとした言動が気になる
Y・Yさん(47歳)のお悩み
21歳の次男の彼女のことで悩んでいます。
彼女は週に2~3回家に遊びに来るんですが、脱いだ靴をそろえない、使った布団をたたまないなど、ちょっとしたことが気になってしまいます。次男よりも歳上の彼女には、なかなか注意しづらいです。
彼女は、私の誕生日に手紙をくれるなど、良いところもたくさんあります。息子が選んだ女性ですし、きっと良い子だと思うのですが、ささいな言動にモヤモヤしたまま……。
長男の彼女とは、友だちのように気軽に話せる関係です。次男の彼女ともそういう関係になれるのが理想ですし、次男からも「彼女と仲良くしてくれてうれしい」と思われたいです。
玉井さんから回答:理想の関係は相手を尊重することから
「息子さんがお付き合いしている女性についてのお悩みですね。まずは『あなたと彼女』の関係性をつくることから始めましょう」と、玉井さん。「息子の彼女」なのに?
息子を介さず、まずは1対1の関係を
理想の関係がどのようなものであっても、誰かと関係性を築きたいのであれば、その人自身との関係を「1対1」でしっかり築くことが必要です。つまり、第三者である息子さんを間に入れる必要はないんですね。
「息子にこう思われたい」「息子が選んだ人だから」という気持ちもよく分かります。でも、大事なのは「あなたと彼女」の関係をどう築くか、ということです。
また、相談者さんは、彼女に対して「靴くらいそろえてほしい」と思っているとのこと。
これは、彼女が「友だちだから」ではなく、「息子の彼女だから」望んでいることではないでしょうか?
もし、理想としている「友だち関係」だったら、そのようには思わないかもしれませんね。 「息子からどう思われたいか」ではなく、「私は彼女とどういう関係になりたいか」として考えてみると、見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。
「○○であってほしい」ばかりだと、自分への満足感も減少
息子と付き合っている彼女は、いつか自分の家族になるかもしれない存在。
いつか自分の家族になるかもしれない女性に対して、「こうしてほしい」「こういう女性であってほしい」という理想を持つのは、決して悪いことではありません。
ただ、誰かと関係を築くということは、年齢に関係なく、その人自身を尊重することです。
自分の理想ばかりが前面に出てしまうと、相手の存在どころか、自分自身や自分の置かれている環境にすら満足できなくなってしまいます。
人の価値観って、つい気になるものですよね。一方、「自分の価値観」に目を向けるのは、実は思いのほか難しいのです。
今、相談者さんは、彼女の価値観が気になっている様子。でも、一度角度を変えて、自分自身の価値観を考えてみるのはどうでしょうか?
相談者さんの価値観に着目すると、お悩みは「靴をそろえてほしい」ということ。「彼女は靴をそろえてくれない」となります。
一方、相談者さん自身を主語に置くと、「靴をそろえておくことは、“私”のこだわりなのよね」となります。これは、自分自身の価値観への気づきや理解にもつながります。
そろっていない靴がどうしても気になるなら、率直に自分のこだわりを伝えるほか、何も言わず彼女の靴をそろえてしまうのも一つの方法です。 何かの折に、彼女の脳裏に「靴をそろえて脱ぐ」ことがよぎるかもしれませんよ。
今月のラク生きヒント:経験から「自分を大切に思う気持ち」 を呼び込む
自分の価値観が尊重されないと、軽んじられたと感じることがあるかもしれません。たとえ相手がそんなことを思っていなくても、苦しいことですよね。
そんなときは、これまでの心温まる経験を振り返ってみましょう。
「自分が誰かにしてもらったこと」「自分が誰かにしてあげたこと」「迷惑をかけたときに助けてもらったこと」など、ささいなことで構いません。
自分自身を掘り下げることで、忘れていたことや、見えていなかったことに気がつくことができます。
たとえ誰かと価値観が合わない出来事があっても、自分自身を大切に思うことができるでしょう。 そうすれば、「私は受け入れられていないのでは……?」というモヤモヤも軽くなるはずです。
雑誌の「ラク生き相談室」もチェック
雑誌『からだにいいこと』では、毎号、玉井さんが別のお悩みにも答えています。人生をもっとラクに生きるためのヒントを知りたい方は、ぜひ、ご覧ください。
取材・文/馬渕綾子 イラスト/ARI
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