土の中の見えないものが「見えるもの」をつくっている
社会起業家ジョン・ムーアさんの“笑顔になれる暮らしのヒント”をご紹介します。 秋が終わると、葉は落ち、植物も枯れ、景色はとても静かに見えます。しかし、見えていない土の中では、一番忙しい時を迎えています。今回は見えないものからつくられる「見えるもの」について考えていきましょう。
この記事の監修:ジョン・ムーアさん
土壌のバクテリアは冬も働いている
四季を持つ日本では、自然は春夏秋冬、実に様々な表情を見せてくれます。葉が落ち、花もなく、時に雪に覆われる冬の景色は、一見生命力がなく、さみしく感じられます。しかし、私たちに見えない世界では、生き物たちがせわしなく働いているのです。
それは、「土の中」です。冬の植物は静かに春が来るのを待っているだけではありません。春に備えてエネルギーを蓄えているのです。植物は、内側へ内側へと力を集めます。木の幹から根へ、根はさらに下へ。深く深く、土の中を張りめぐります。そして、根のまわりの微生物と虫たちが協力して、植物に栄養とエネルギーを集めてくれます。
土壌のバクテリアは生命力にあふれた土をつくります。バクテリアたちは栄養たっぷりの土をつくり、バクテリアは植物の根から栄養素を受け取ります。しかし植物とバクテリアは友達ではありません。「共生関係」です。片方が死ねば、もう片方も死ぬという、お互いがいないと生きていけない関係なのです。このやりとりは、とても小さくて、ゆっくり。根のまわりのバクテリアが1平方センチメートルの土をつくるのに、100年くらいかかります。自然界のスローフードは、これくらいゆっくりのスピードなのです。
そして、本物の土は多様な生物の命に満ち溢れています。1平方センチメートルの表土の下には、数千キロメートル生きたネットワークが張りめぐらされています。微生物やバクテリア、菌類、根が土の中でつながり、エネルギーを生み出し蓄えているのです。このネットワークが、春に芽吹き、花を咲かせる力を支えるエネルギーなのです。
命はいつも命から生まれます。人間の目では、地球上の生命体の大半は見ることができないでしょう。見える世界でさえ、限られた光のスペクトルの範囲でしかないのです。見えないものは、見えるものをつくります。目に見えないバクテリアが私たちの食べ物をつくり、植物は光をエネルギーへと変換します。では、光はどこから生まれたのでしょうか? 冬の一日、見えない世界を感じ、命のつながりを想像してみませんか?
ジョンさんからの一言
ジョンさんがアンバサダーを務めるオーガビッツとは?
orgabits
日本で最も多くのアパレルブランドが参加するオーガニックコットン普及プロジェクト。オーガニックコットン100%にこだわらず10%の商品を100倍の人に届けるという「逆転の発想」で現在約100ブランドが参加。一枚の服を通しておしゃれに参加出来る社会貢献活動としても注目されている。
取材・文/坂田奈菜子 イラスト/ハシモトジュンコ
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