総合診療医が教える、今すぐ病院へ行くべき「がんの危険症状」とは?
早期発見が大切と言われても、がんの初期は症状を自覚しにくいもの。気づかないままに進行させて後悔しないためには、日頃の体調不良を見逃さないことが重要です。そこで家庭でできるがんの危険症状を医師が解説します。
※2019年4月時点の取材記事です。がんの早期発見は、定期的ながん検診が大切です。体調不良が続く場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。
目次
“手遅れだった”と後悔しないために。知っておきたいがんの情報
「がんは、小さいうちに見つけて早期治療が叶えば、生存率も高く、決して怖い病気ではありません」と、福島県立医科大学会津医療センター総合内科の山中克郎(かつお)さん。
「一方で、がんは多くの場合、ある程度進行しないと症状が現れないという特徴もあります。日本は欧米諸国に比べ検査受診率が低く、がんが発覚したときは“手遅れだった”ということも少なくありません」
そこで何より大切になるのが、がん検診です。
「がんを早期に発見するためには、定期的ながん検診が必須です。それに加え、普段からの体調不良を見逃さないようにすることも重要」と山中さんは言います。
Dr.山中診断マニュアル「家庭でできるセルフチェック」
「体重の減少や、体調不良が1カ月以上続くという症状は、体からのSOSである可能性が高いでしょう。すぐにかかりつけ医に相談してください」と山中さん。
早期発見には定期的ながん検診が重要になりますが、“体からのSOS”がそのヒントになることもあります。次の項目をチェックしてみましょう。
※次の項目は、あくまで「家庭でできるセルフチェック」になります。定期的ながん検診に加え、心配な場合は自分で判断せずに医師に相談してください。
【A】半年〜1年の間に体重が全体の5%以上減った
体重60kgの人の場合、半年〜1年で3kg以上ヤセたら体重減少と判断。がん以外にもヤセる病気は多いので、絞り込みのためにヤセたことに加えて、下の1〜8のリストもチェックしてみてください。
【B】1カ月以上、体調に異変がある
例えば風邪と思われる症状でも、ウイルスは10日ほどで死滅するはず。そのため1カ月以上続く場合は注意が必要です。それに加えて、下の1〜8のリストもチェックしてみてください。
A、Bに加えて、次の1〜8の項目をチェック!
AかBのどちらか、もしくは両方に当てはまった人は、下の症状や習慣がないかをチェックしましょう。「疑われるがん」以外にも、他の病気が隠れている可能性もあります。症状が続く場合は、必ずかかりつけ医に相談してください。
1、黒い便または血便が出る
【疑われるがん】黒い便…胃がん、血便…大腸がん
黒い便や血便は、胃や腸などの消化器官の出血で起こる症状。胃で出血すると便が黒く、腸で出血すると便が赤くなります。
2、貧血がある、階段で息がきれる
【疑われるがん】消化器がん
消化管からの出血によって貧血が起こり、動機や息切れといった症状を起こすことがあります。
3、腹痛・背中に痛みがある
【疑われるがん】すい臓がん
体重減少やお腹・背中の痛み、糖尿病の悪化は、すい臓がんで起こることがあります。
4、顔が黄色っぽくなった
【疑われるがん】すい臓がん
胆汁を消化管に排出する道がすい臓がんによってふさがると、皮膚が黄色くなります(黄疸・おうだん)。
5、タバコを吸う
【疑われるがん】肺がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、肝臓がん、膀胱がん、子宮がん
タバコの煙は遺伝子にも悪影響が。喫煙者本人だけでなく受動喫煙で、周囲の人や子孫にまで悪影響を及ぼすこともあります。
6、咳・たんに血が混じる
【疑われるがん】肺がん
肺にがんがある、もしくは気管支に炎症が起きている可能性があります。
7、肩が痛い、肩から腕がしびれる
【疑われるがん】肺がん
肺の上部にがんができると神経を障害し、肩や腕の痛み・しびれが生じます。
8、便が細くなった
【疑われるがん】大腸がん
大腸がんでは便が細くなることがあります。がんにより大腸が閉塞する(腸閉塞)、便やおならが出なくなり、腹痛や便の臭いがする嘔吐を繰り返します。
チェックが入った場合は?
【A】【B】どちらか、もしくは両方にチェックが入り、さらに1〜8の項目のどれか1つでもチェックが入った人は、すぐに病院へ。
医師には【A】【B】に加えてどんな症状があるか、チェックが入った1〜8の内容を話してください。
「医師にとって問診は、最も大切な診断材料の一つ。自分の体の声が命を救うことがあります」と、山中さん。普段から体の声にていねいに耳を傾けるようにして、早期発見につなげましょう!
※2019年4月時点の取材記事です。
イラスト/多田景子
(からだにいいこと2019年6月号より)