気になる体の「臭い」対策。口臭、汗、ストレス臭を改善するには?|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「臭い」がテーマ。気になる体臭を改善する、東洋医学のヒントを紹介します。
目次
口臭、汗、ストレス臭…。臭いの原因「湿熱」と「食積」とは?
マスクをつけると気づく口臭や、夏になると気になる汗の臭い、メンタルからくるストレス臭など、自分の臭いがどうなのか、気になる瞬間がありますよね。特に気温が上がると、汗をかいた後の体臭や、デリケートゾーンの臭いにも敏感になります。
東洋医学では、そんな臭いの原因となるものは次の2つだと考えられています。
ゴミが腐るのと同じ「湿熱(しつねつ)」
臭いの原因、一つ目は「湿熱(しつねつ)」。例えば、生ゴミのような湿ったものを室温の高い場所に放置していると、嫌な臭いがしてきますよね。
人間の体も同じで、体の中で処理ができなくなった水分=「湿(しつ)」と、溜まった「熱」が結びついて、「湿熱」が発生。
「湿」は食べすぎや飲みすぎ、「熱」は辛いものの摂り過ぎやストレスなどにより生まれ、うまく排出できないと体臭の原因になります。
消化不良が引き起こす「食積(しょくせき)」
もう一つの原因が「食積(しょくせき)」。“食べる”と“積もる”の文字通り、食べすぎで胃腸の働きが追い付かず、消化不良を起こしている状態です。
消化できずに残ったものがどんどん体内で積み重なると、それが腐敗し、体臭の原因となります。胃腸が気付かないうちにキャパオーバーとなり、口臭や汗の臭いとなってあらわれるのです。
歯磨きをしているのに消えない…「口臭」
マスクをするようになって多くの人が感じているのが「口臭」。2つの原因、「湿熱」と「食積」により、体内に溜まった臭いが、出口でもある“お口”から放出。体内の状態が原因のため、歯磨きをいくらがんばっても改善しません。
また、口内が乾燥することでも起こり、ストレスや緊張で口が乾くと、ますます口臭がきつくなります。口内炎や歯肉炎になりやすい人も口内環境が悪い可能性があります。
人が近くに来ると気になる…「汗の臭い」
人が近くに来ると気になるのが「汗の臭い」。汗をかいたあとは、「もしかして臭っている?」と不安になりますよね。汗を拭いたハンカチやTシャツが臭いという人は注意。
汗は、体にこもった「湿熱」と「食積」が汗腺から出ている状態です。この体質の人は、汗をかくと肌がベタベタするのが特徴。反対にサラサラの汗は、あまり臭いません。
女性ならではのお悩み…「デリケートゾーンの臭い」
汗や生理周期による蒸れで気になるのが「デリケートゾーンの臭い」。デリケートゾーンは常に潤っているのが正常ですが、余計な水分=湿が多すぎたり、体に熱がこもったりすると、臭いやかゆみが起こりやすくなります。
また、熱が増えるとおりものが黄色っぽくなったり、量が増えたりする変化もあります。
イライラが臭いに現れる…「ストレス臭」
ストレスと臭いも関係があります。イライラや感情の起伏からくる「ストレス臭」には、体の様々な機能を調整し、情緒を安定させる働きを持つ「肝」が関わっています。
ストレスなどの影響で「肝」の働きが低下した結果、熱邪(熱による邪気)が生まれ、多汗や体臭につながります。イライラ、落ち込みが激しい人は要注意。
「臭い」対策に効果的な食べ物と生活
次からは、これらの臭いを改善する対策とツボを紹介します。
「湿」を取り除く食べ物を摂る
「湿熱」対策にはまず、体に溜まった「湿」を取り除くことが大切です。わかめ、昆布、ひじきといった海藻類のほか、きゅうり、冬瓜、ハト麦、小豆などがおすすめです。ハト麦、小豆は、お茶で飲むのも効果的。「熱」を溜め込まないためにも、辛いものを控えることも忘れずに。
「食積」には消化を助ける食べ物を
食べ物が積もっている状態の「食積」対策には、消化を助ける食材を積極的に摂りましょう。野菜なら大根やキャベツ、フルーツならパイナップルやりんごが消化をサポート。梅干しも、唾液の分泌を促し、消化を促進させます。
汗をかいて「湿」を追い出す
食べ物以外の「湿熱」対策として、汗をかく習慣も取り入れましょう。冷房の効いた部屋で冷たいものを食べてばかりいると、どんどん「湿」を体に溜め込んでしまいます。
お風呂や岩盤浴、涼しい朝・夕のタイミングにウォーキングするなどして汗を流すと、臭いの元になる「湿」が排出されます。
ストレスを溜め込まない生活を
ストレスも「肝」の働きを停滞させて臭いの元になります。イライラしたり落ち込んだりしたら、上手にストレスを発散できる時間を。
ひとり時間を持ち、自分の好きなことをして過ごす、何もしないでただボーっと過ごすなど、週に数時間は心をリラックスさせてください。ストレスが減ると口臭も軽減します。
「臭い」対策のツボ4選
湿熱に効く「豊隆」
体の余分な「湿熱」を取り除いてくれるツボです。
豊隆(ほうりゅう):すねの外側。ひざと足首の中間にあり、外側の筋肉が一番盛り上がっている場所。
押し方:親指をツボに当て、ゆっくりと肌が沈み込む程度に刺激。
湿熱に効く「陰陵泉」
胃腸を元気にして、体の水はけをよくしてくれるツボです。
陰陵泉(いんりょうせん):ふくらはぎの内側。内くるぶしから骨の際に沿って上がっていき、ひざの下あたりで指が止まる場所。
押し方:親指をツボに当て、ゆっくりと肌が沈み込む程度に刺激。
食積に効く「足三里」
胃腸の働きを高めて、食べ物の消化吸収を助けてくれるツボです。
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:骨の方に押し込むように、親指でグッと力を込めて、イタ気持ちいい強さで押しましょう。
食積に効く「内庭」
胃腸の働きを高めながら、胃熱を取り除いてくれるツボです。
内庭(ないてい):足の人差し指と中指の間。水かきの部分の赤い皮膚と白い皮膚の境目にあります。
押し方:ツボ自体、押しにくい場所にあるので、ペン先や爪楊枝などでチクチクと刺激しましょう。
今月の養生ポイント:「臭い」で分かるその人の体調
東洋医学では、舌や脈、お腹などの状態で、症状を診断します。その中の一つに、五臓の状態を表すものとして、「臭い」があります。
それぞれの五臓の状態は、このような臭いとして表れます。
・ストレスの多い生活で「肝」が弱る…脂っぽい動物臭
・余裕のない日々に追われ「心」が弱る…焦げ臭くなる
・暴飲暴食で「脾(胃腸)」が弱る…花や果物のような甘い臭い
・呼吸が浅くなったり、潤い不足で「肺」が弱る…魚が腐ったような臭い
・疲れが溜まりすぎて「腎」が弱る…鼻につく、腐ったような臭い
臭いは自分ではなかなか分かりづらいものですが、気になる人は「どんな臭いがする?」と、家族に正直に聞いてみてもいいでしょう。
生活習慣や食事を見直すだけで、ベタベタ汗からサラサラ汗に変わったり、ベタッとしたうんちから、ぷかぷか浮くうんちに変わったりして、次第に臭いが軽減します。臭い対策は“五臓”の状態を整えることから始めてみてくださいね。
イラスト/植松しんこ
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